リテール大革命

地元の小さな店を“オンライン”にする、米国スタートアップ3選大資本VS. ローカル(4/4 ページ)

» 2021年03月19日 08時00分 公開
[中山悠介ITmedia]
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小売店と倉庫スペースをマッチングさせる「DarkStore」

(3)DarkStore(ダークストア)

  • 提供サービス:小規模店舗と空き倉庫スペースのマッチング
  • 地域:米国サンフランシスコ市
  • 設立:2016年
  • 投資家:EQT Ventures(イーキューティーベンチャーズ)、PivotNorth(ピボットノース)など

 これまでオンライン販売を行ってこなかった小規模店舗には、オンライン事業が伸びてくるにつれて出てくる大きな課題があります。それはフルフィルメントと呼ばれる、オンラインで受注した商品を消費者に届けるまでの一連の業務で、在庫管理や物流などが代表的です。

 移り気な消費者をつなぎとめるために、欲しい商品がいつでもある、欲しい商品がすぐに届く、という価値は非常に重要です。しかし、日本とは比較にならないほど国土の大きい米国では、このフルフィルメントを高品質で実現することが非常に難しい。逆に言えば、AmazonやWalmartなどの新旧の巨人は、フルフィルメントの視点で他社を凌駕(りょうが)できているからこそ、現在の地位をオンライン販売の領域で確保できています。

 ダークストアは、自前で大規模な倉庫や物流センターを手配できない小規模事業者に向けて、空き倉庫スペースおよび配達リソースを提供するマッチング事業者です。小売店やショッピングモール、倉庫事業者が散在的に持っている余剰スペースを束ね、各地の小規模事業者がオンデマンドで利用できることにするサービスであり、いわば空きスペースのロングテールアグリゲーターです。

 また、配送は各地のUberRUSH(ウーバーラッシュ)やその他の配送事業者と提携し、即日配送を実現しています。最近ではIKEA(イケア)、Office Depot(オフィス・デポ)、Amazonのための配送も行っている配送事業者T-Force(ティ・フォース)と提携したことで、彼らの倉庫/配送ネットワークを活用できるようになりました。


 本日紹介したスタートアップ3社は、在庫、配送、集客、接客など、ECサイトに必要な個別機能をアンバンドルして提供する特化型スタートアップです。これらの特化型スタートアップが支援するローカルの小規模店舗たちが、バリューチェーンを垂直的に統合する大企業にどのように戦っていくのでしょうか。

 時期の差こそあれ、小規模事業者によるオンライン販売市場が今後ますます大きくなることはどこの国でも不可逆のトレンドのはず。今後の日本のリテール業界を考えるうえでも、一つのヒントになるのではないでしょうか。

著者プロフィール:中山悠介

 三井物産株式会社、ボストン コンサルティング グループを経て、2017年にGMOペイメントゲートウェイ株式会社に入社。現在は、企業価値創造戦略統括本部、経営企画・新領域創造部 部長

 Fintech領域における革新的ビジネスの企画・創出がミッションの一つ。次世代ビジネスの種まきのため、社内での新規事業インキュベーションだけでなく、M&A、スタートアップ投資、大手企業とのアライアンス構築など幅広く活動している。趣味は博物館、水族館、科学館などの「館」めぐり。

 埼玉県立浦和高等学校、京都大学経済学部卒


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