「境界戦機」「30 MINUTES SISTERS」――BANDAI SPIRITSはなぜ新作を次々に発表したのか(3/3 ページ)

» 2021年03月21日 21時15分 公開
[しげるITmedia]
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 もうひとつの「境界戦機」の変則的なポイントが、プラモデルがHG(ハイグレード)というブランドで発売される点である。

 現在、ガンプラには低価格帯で手に取りやすいサイズ(10〜15センチ程度)のHG、同じサイズ感ながらより精密なRG(リアルグレード)、20〜30センチ程度の大きさで細かい作り込みが楽しめるMG(マスターグレード)、30センチ以上のサイズで完成度も価格も高いPG(パーフェクトグレード)というブランドがある。中でもHGはガンプラ誕生10周年を記念して作られた歴史あるブランドであり、コレクション性も高いことから最も多くの商品が発表されてきた。

 以前にもガンダム以外の作品のキットに対してHGのブランド名が冠されたことはあったが、BANDAI SPIRITSに再編されブランドの統合・整理が行われる前後で「HG」のブランドの運用は格段に柔軟になった。過去に「聖戦士ダンバイン」「重戦機エルガイム」「機動戦艦ナデシコ」「ラーゼフォン」といった80年代以降のロボットアニメのキットがHGで商品化されてきたが、近年では「パシフィック・リム」「マジンガーZ」「サクラ大戦」「鋼鉄ジーグ」「フルメタル・パニック!」とゲーム・実写映画・アニメを問わなくなっており、HGで扱うタイトルの幅が大きく広がっている。

 「境界戦機」もそれに連なる作品である。かつてバンダイがプラモデルとして発売するのは、ガンダムとそれに近いロボットアニメがほとんどだった。しかしBANDAI SPIRITSに変化して以降はプラモデル化の対象は大きく広がり、それに伴ってHGというブランドの運用方針も変化した可能性が高い。「境界戦機」も、その流れに乗った作品と言えるだろう。

 このように、「境界戦機」(と、同時期に発表されたBANDAI SPIRITS関連コンテンツ)は、BANDAI SPIRITS設立の狙いを強く感じさせるものである。これらのコンテンツのうちどれが数年後まで生き残り、どれがガンダムと並ぶ稼ぎ頭になるかは、新年度以降に徐々に明らかになるだろう。コロナ禍の中でも業績を確実に伸ばすBANDAI SPIRITSがどのようなコンテンツを提供しどのような商品を市場に投入するか、4月以降の動きに要注目である。

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