餃子の王将、コロナ禍で店外売り上げが急増 「自社配達」か「ウーバー」か問題を考える飲食店を科学する(4/5 ページ)

» 2021年03月30日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

見落とされがちなデリバリーのコスト

 飲食店がデリバリーを行う上で最初に考えるべきことは、「自分たちで運ぶ」と「人に運んでもらう」の選択です。

 1年前から、出前館やウーバーイーツといった宅配のポータルサイトを利用する飲食店が増えました。こうした宅配サービスを飲食店が利用する際には一定の手数料がかかります。手数料は契約するサービス会社やエリア、契約形態などによって変わります。さまざまなケースがあるのですが、一般的には売り上げの30〜40%程度が手数料としてかかります。「こんなに手数料がかかるなら、自分たちで運んだ方が良いのでは?」と思う方も多いでしょう。ただ、自社配達にももちろんコストがかかります。

 一例として、店舗から半径2キロの商圏に自社配達した場合のコストを、次のようにシミュレーションしてみます(「同時に複数宅への配達」などは考慮しない)。

(1)デリバリーするのは半径2キロの商圏

(2)デリバリー往復距離は4キロ

(3)平均時速は20キロ(※道路状況によって異なる)

(4)デリバリーの移動時間12分

(5)デリバリーの段取り時間10分

(6)デリバリー1件当たりの所要時間22分(4と5の合計)

(7)デリバリー1件当たりの人件費366円(※時給1000円とする)

 こうして計算してみると、デリバリーの人件費は1件当たり366円だと分かります。当然ながら、1回のオーダーで複数人分頼んでもらえれば効率よく配達できます。一方、オーダー金額が少なければ、デリバリーにおける人件費率は高くなります。実際に餃子の王将の宅配ポータルサイトで確認すると、ある店舗では「最低宅配注文条件は商品800円+送料420円」となっています(店舗や掲載ポータルサイトなどでは金額が異なるケースもあります)。

 これに当てはめて考えると、「デリバリー人件費366円÷1220円(商品+送料)=デリバリー人件費率30%」と計算できます。

 一般的に、飲食店の人件費率は30%程度が指標とされています。しかし、これはあくまで準備や調理、接客等の時間を含めた指標であり、配送だけで30%もの人件費を使うのは厳しいという状況があります。さらに、自社配達を行う場合には、人件費以外にも配達人員を採用する費用、教育費、バイクなどの購入費、保険料、ガソリン代などさまざまなコストがかかります。そのため、一概に自社配達の方がコストが抑えられるとも言い切れません。

 コストがかかるからといって、消費者が高い値段で買ってくれるとは限りません。デリバリーを始める上では、商圏分析やメニューの原価分析、作業負荷分析、オペレーション検証などを行った上で、自社に合ったビジネスモデルを構築する必要があります。「飲食店の店内メニューを運ぶだけ」という考え方では、デリバリーは成功しないのが実情です。このことは、テークアウトにも当てはまります。基本的に、店内飲食のピークタイムとテークアウトのピークタイムは重複します。両方のメニューを効率良くこなせる厨房導線設計や、オペレーション構築が必須になります。

 デリバリーやテークアウトに限らず、コロナ禍を乗り切り、事業を再成長させていくためには、課題解決に向けた明確な方針を打ち出すことが重要になります。餃子の王将はウィズ・アフターコロナを見据えて、どのような経営方針を打ち出しているのでしょうか。

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