税別・税込といった今回の規制は、今話題の「ダークパターン」に通じるところがある。ダークパターンとは、ユーザーが購買の意思決定を行う際に錯誤をもたらしやすくするパターンを指す。
具体的には、“購入"よりも“定期購入"のボタンがデフォルト選択されていたり目立つようになっていたりといったものや、レジに進んだ段階で初めて送料や税金が表示される「ヒドゥンコスト」などさまざまなパターンがある。
今回の税別表示の問題も、会計まで消費税負担が意識されにくい価格の表記方法であることから、まさにダークパターンにおける「ヒドゥンコスト」に当たるといえるだろう。
この点について、本当に商品やサービスに自信があるのであれば、顧客を誘導することなしに経営は成り立つという意見を提唱する者もいる。
かたや、本当に商品に自信があるからこそ、顧客を導く必要があるという意見もある。例えば高いカメラ機材や照明器具を使った「実態以上に美味しそうに映しているハンバーガーのCM」も、捉え方によってはダークパターンに分類されないだろうか。
しかし、いくら実態に即した情報を提供して顧客に選択肢を与えるにしても、「オフィスの机に置いたハンバーガーをただスマホで撮影したようなCM」でハンバーガーを食べたいと思う消費者は出てくるかは疑問である。
確かに消費者の保護は重要なテーマだが、規制面での対応が行き過ぎるとフィクションが許容できない社会となってしまう恐れがある。税別表示が本当に錯誤をもたらすのであれば、経過措置を経てすぐに社会問題化していたはずだ。しかし、ほとんどの国民は消費税がプラスされることを知っているために、298円や398円といった値札をある程度割り引いてみるだけのリテラシーがあるといえるのではないだろうか。
そうであれば、消費者自身でリテラシーを高めていくことも、消費者としての役割の一つともいえないだろうか。今は曖昧な部分も残るダークパターンについても得られる効用と、そのために企業が負担するコストの観点から一定の線引きを求めていくことも必要だ。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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