なぜオリオンビールはアルコール度数「9%」を止めて「2%」の商品を首都圏でも発売したのかECはリニューアルで売り上げ200倍(2/5 ページ)

» 2021年04月01日 06時00分 公開
[長濱良起ITmedia]

初めてのチューハイ「WATTA」

 19年5月には、初めて缶チューハイを商品ラインアップに加えた。ブランド名は「WATTA(ワッタ)」。沖縄の言葉で「私たち、俺たち」という意味合いの“わったー”と、県産素材を“割った”をもじった。

「WATTA(ワッタ)」(出所:プレスリリース)

 WATTAの特徴は、県産素材をフレーバーに採用していることだ。シークヮーサーやパッションフルーツ、レモンなどを使用し、パッケージも県産品の使用を目立つようにデザインしている。素材だけではなく、アイスクリームの「フォーモスト・ブルーシール」やファストフードA&Wの「エイアンドダブリュ沖縄」、乳酸菌飲料のヨーゴを発売する「沖縄森永乳業」といった、沖縄ならではの味を提供する県内企業とも続々コラボし、WATTAの限定商品を繰り出している。

 同社マーケティング本部オリオン・ブランドマネジメント課の吉田直樹課長は「オリオンビールの他社との唯一無二の違いは『沖縄だ』という点です」と、同社にしかない強みを語る。「沖縄県で沖縄のみなさんに育てていただいています。県産素材を使ったり、地元の企業さんとコラボしたりすることが、われわれの一番の良さをアピールできますし、お客様にとっても喜んでもらえることなのではないかなと思います」

米国で人気の新ジャンルを県内外で発売

 3月23日には米国で人気が高いアルコール飲料ジャンル「ハードセルツァー」を大手メーカーとしては国内で初めて発売した。

ハードセルツァー「DOSEE(ドゥーシー)」(出所:プレスリリース)

 ハードセルツァーとは、いわば“フレーバー付きのアルコール入り炭酸水”のこと。低糖類で低カロリー、グルテンフリーであることから、米国では19年ごろから若者を中心に一大ムーブメントを起こしているという。市場は急成長しており、15年に1億ドル未満だったものの、19年には15億ドルの市場規模に成長。海外大手メーカーからの発売も相次いでいる。

 ブランド名は「DOSEE(ドゥーシー)」。沖縄の言葉で友達を意味する「どぅし」を名前の由来とした。フレーバーはグレープフルーツ、シークァーサー、アセロラの3種類を展開する。沖縄県産の月桃由来エキスを使用し、適度な飲みごたえとドライな後味のある味わいに仕上げた。

 DOSEEの特筆すべき部分は、アルコール度数が2%という点だ。これまでに同社のチューハイで3%の商品はあったが、これまでにないほど低度数に抑えている。これは、20代から30代の若年層に低アルコール度数のニーズが高まっていることに加え「ゴクゴク飲んでも酔いすぎない」という視点も加味した。

 同社としては初めて沖縄県内外同時発売も試みた。関東の一都三県(東京、埼玉、千葉、神奈川)の一部小売店に並ぶ。これまで、県外の小売店向けには提携社であるアサヒビールを経由した販路しか持っていなかったが、DOSEEの新発売やWATTAの関東展開を見据えて、20年秋に東京支店に小売店への営業を行う部署を新設、準備を進めていた。

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