新型コロナウイルスは企業活動に多大な影響を与えている。
まだコロナが猛威を振るう前だった「Beforeコロナ」の2019年度、営業収益1兆8446億円、純利益3978億円を稼ぎ、優良企業の代名詞でもあったJR東海の黒字を、コロナはいとも簡単に吹き飛ばし、2000億円を超える最終赤字(20年度通期業績予想)に転落させた。
同社発足以来初となる赤字決算になるばかりか、オンライン会議の定着などによる社会構造の変化も起こり、出張需要を取り込んできた「東海道新幹線不要論」まで飛び出している。JR東海はもはや社会的意義の薄れた存在になってしまったのか。
さまざまな懸念が飛び交う中、渦中のJR東海は次々に手を打っている。
キーワードは「観光」だ。JR東海の収益の柱は東海道新幹線であり、その利用目的はビジネスと観光に大別される。ビジネス需要は、出張する会社の予算や方針などに縛られることから、需要喚起は困難といわれる一方、観光需要はプロモーションなどにより膨らますことが可能だ。
コロナ一色だった20年、JR東海は定番の旅から時間、場所、行動などをずらす「ずらし旅」をキャンペーンとして打ち出した。JR東海営業本部・荒井良介氏は「ずらし旅」について、「ずらすことにより新しい発見のある楽しい旅をつくることができ、結果として気になる人混みを避けることにもつながります」と狙いを話す。時勢に合ったコンセプトとしたことから話題となり、秋にはbeforeコロナの前年を上回る旅行商品の売り上げとなったという。
年度を通じては2000億円規模の最終赤字が予想されているものの、緊急事態宣言が発令されなかった第3四半期(10-12月)に限定すると、純利益20億円の黒字化を達成している。同じく第3四半期、JR他社や航空会社が軒並み赤字だったことを考えると、「ずらし旅」を使ってGoToトラベルキャンペーンの需要をうまく取り込んだといえる。
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