クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ホンダの「世界初」にこだわる呪縛 自動運転レベル3に見る、日本の立ち位置高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)

» 2021年04月12日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

自動車技術の国際基準化がもたらした功罪

 自動運転に限らず、クルマの技術的な取り組み、保安基準など公道を走るための安全性の確保の国際基準化が進んでいる。それを取り仕切っているのが通称WP29、自動車基準調和世界フォーラムである。

 これは国連欧州経済委員会(UN/ECE)の下部組織にあたり、EUはもちろんのこと日本、米国、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、 中国、韓国などが参加している。また、OICA(国際自動車工業会)、IMMA(国際二輪自動車工業会)、ISO(国際規格協会)、CLEPA(欧州自動車部品工業会)、SAE(自動車技術会)といった非政府機関も参加することで、自動車部品におけるさまざまな規格や技術を国際基準で判断する物差しとして機能している。

自動車基準調和世界フォーラム(WP29)の位置づけ

 このWP29では排ガス規制や衝突安全基準、灯火類や室内の安全装備など、さまざまなクルマの規格を国際基準化する取り組みを行っている。設立された目的は、自国のクルマを輸出するために各国のクルマの規格を擦り合わせしようというものだ。設立は1952年と古く、日本は 1977年から継続的に参加している。

 当時はオイルショックの後でクルマの販売が落ち込んだ頃であり、日本が輸出に力を入れようとしていたことから、欧州に受け入れられるクルマづくりを目指した姿勢が見てとれる。

 やがて80年代に入るとクルマの品質は軒並み高まり、いよいよ国際的に自動車産業が成熟し始める。日本でも輸入車の販売が上昇し、80年代後半には輸入車にも型式認証が取り入れられ、新規登録時の手続きが簡素化されるようになった。

 その頃はまだクルマに対する規制も厳しくなく、排ガス規制への対応を除けば、各国の規制へ車両を対応させる作業も、それほど大変ではなかった。やがて衝突安全基準や環境性能について、厳格な基準が設けられるようになり、WP29はより国際基準化を効率的に進める組織へと発展していった。

 自動運転に関しては分科会が設けられ、日本は英国とともに議長国として、積極的に取り組んでいる。今回のレベル3の自動運転を世界に先駆けて実現したのも、そうした立場が背景にあることを知れば納得がいくだろう。

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