1年前から、オフプライスストアが期間限定で出店するポップアップストアが各地の百貨店で見られるようになった。大半が催事場ではなく、婦人服売場のイベントスペースで展開しているのが特徴。コロナ禍で撤退したブランドショップが目立つ中で、百貨店が生き残りのため、何とか次の流行を見極めようと試験的に導入しているようだ。
百貨店での期間限定の展開に熱心なのは、ショーイチ(大阪市)というアパレルなどの在庫処分を専門とする会社。取引法人数は約4000社で、そのうちアパレル関連は2347社(18年1月1日現在)となっている。
ショーイチでは、20年9月1〜29日に、小田急百貨店新宿店(東京都新宿区)の6階婦人服売場にて、百貨店業界初のオフプライスストアを出店。好評だったため、同年11月11日〜12月15日、第2弾として秋冬物の商品を販売した。
さらに、第3弾として、21年2月24日〜6月1日、「COLORS PLUS」の店舗名で、取り扱いブランドと期間を拡大して出店。商品はヤングミセスからミセスを対象としているが、希望小売価格の30%オフ、50%オフは当たり前で、中には90%オフというケースもある。
小田急百貨店・広報によると「かつて百貨店で販売していて、メーカーが廃止してしまったブランドの商品も販売している」とのこと。百貨店らしいオフプライスストアの在り方を確立しようと懸命だ。
ショーイチは、3月2〜17日、東武百貨店池袋店(東京都豊島区)でも4階婦人服売場のイベントスペースにて、約10坪のオフプライスストアを出店した。ミセスの国内3ブランドで展開している。
しかし、東武百貨店・広報によれば、「緊急事態で外出自粛傾向にあり、売り上げは厳しく、次回以降の出店の予定は現在のところない」とのこと。
激安商品を並べても、時期と展開方法を考えないと、必ず成果が出るとは限らないのだ。
この他にもショーイチは、2月27日〜3月22日に、近鉄百貨店奈良店(奈良市)に「Colorsu(カラス)」を出店。レディースアパレルを中心に、雑貨も多く取りそろえたオフプライスストアで、同社としても奈良県初出店だった。なお、売り上げの一部は、アジア諸国の孤児院への支援を行うボランティア「TASUKEAI 0 プロジェクト」に寄付している。
同社は常設、一部ポップアップも含めてオフプライスストアのカラーズやカラスを国内26店にまで拡大している。期間限定ショップを通じて、百貨店におけるオフプライスストア定着へと積極的に動いている。
日本には、これまで在庫処分品を販売するという意味でのオフプライスストアがなかったわけではない。「バッタ屋」と呼ばれる、偽物も紛れていそうな怪しいイメージの店が存在した。恒常的な激安を前面に出したプライス訴求の店であった。
ところが今日のオフプライスストアには、産業廃棄物による焼却ごみを減らすエコロジー、SDGsの思想が背景にある。これは、飲食業界で食品ロスが問題視されているのと類似している。オフプライスストアの経営者は、恵まれない子どもたちのための支援に収益の一部を寄付するなど、社会貢献への意識が強いのも特徴だ。
オフプライスストアは、欧米では既に巨大なマーケットになっていて、日本でも有望な分野であることは間違いない。
ただし、年間15億着が売れ残るというアパレルの膨大な余剰在庫から、売れる商品を見つけ出すには、バイヤーの目利き力が欠かせない。有能なバイヤーの育成に成功した企業が最終的に勝ち残るだろう。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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