クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

トヨタがいよいよEVと自動運転 ライバルたちを一気に抜き去るのか、それとも?高根英幸 「クルマのミライ」(1/3 ページ)

» 2021年04月26日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

 先月、ホンダは世界初の自動運転レベル3を搭載したレジェンドを発売したが、それを追い掛けるようにして、トヨタは最新の運転支援技術を採用した新機能「Advanced Drive」をレクサスLSとMIRAIに搭載して発売した。

トヨタMIRAIとレクサスLSに用意されたAdvanced Driveのセンシングシステムの構成図。従来のSAFETY SENSEのセンサーも利用しながら、新たに高度なセンサーを追加している

 ハンズフリー機能そのものは、すでに日産やBMW、メルセデス・ベンツが導入しており、目新しいものではない。そういう意味では日産の「プロパイロット2.0」に近いものと判断することもできるが、プロパイロット2.0では追い越し時にはステアリングに手を添える必要がある。それに対しAdvanced Driveは追い越し時もステアリングを握る必要はなく、ドライバーが承認するだけで自動的に追い越し操作まで完了する。システムの複雑さとその完成度ではトヨタの方がワンランク上だ。

 その上で、トヨタがレベル3に踏み込まなかったのは、実際に使う人のことを考えているからだ。

 ホンダはリースで100台限りの販売であるのに対し、トヨタはレクサスLSとトヨタMIRAIの最上級グレードとして用意している。その価格はMIRAIでは同じ装備の従来グレードより55万円高、LSはグレードにより66〜98万円高。レジェンドに比べればリーズナブルで、多くのオーナーが選択するであろうことが予想できる。

 そしてドライバーに優しい自動運転を本当に考えた時、よそ見をしてもいいが何かあった時にはドライバーの責任が追求される可能性があるレベル3より、そもそもよそ見ができないレベル2を維持していた方が分かりやすく、ユーザーに誤った認識による使われ方をされる危険性も少ない。しかも、その上で自動運転としての技術は最高レベルを目指している。

 その証拠となるのがLiDARの採用だ。赤外線レーザー光を幅広く照射して、その反射から対象物の形状と距離を分析できる、数ある障害物を検知するセンサー類でも最も緻密で高性能なレーザースキャナーである。

 自動運転のレベル分けを考え直すことも視野に入るほど、トヨタは自動運転に対して技術面では最高レベルを実現しながら、その扱いについては慎重さを失わない姿勢を維持している。

 このあたりは、報道の方向性によってコロコロと説明を変えるテスラとは対照的だ。オートパイロットを自動運転と呼んだり、FSDと呼ばれる追加機能を完全自動運転とうたったりする一方で、事故が起これば自動運転ではないと釈明するというシーンをこれまで何度か見てきた。

 ベンチャーらしいしたたかさと言ってしまえばそうだが、イーロン・マスクほど強じんなメンタルを持ち合わせていなければとても乗り切れない戦術で、マスコミや政府機関を相手に立ち回ってきた。

 トヨタはドライバーが例え間違った使い方をしても、乗員を危険な目に遭わせることがないように、幾重にもフェイルセーフを重ねている。ステアリングに重りをつるしただけで、ドライバーが運転席に居ると判断してしまうようなシステムは、トヨタでは絶対に作らないのだ。

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