同じことはEVに対する戦略にも通じる。日本の経済界を支える25兆円企業としての責任感と、斬新なアイデアを魅力たっぷりに見せユーザーや投資家を少々欺いても資金や売り上げを手にしようという灰色の商魂とでは、ビジネスの方向性がまったく違うのだ。
先日の上海モーターショーで、トヨタは新しいEVを発表した。すでに試作モデルとして発表していたデザインの完成形であったものの、そのスタイリングと明かされている機能は、今後の売れ行きを予感させるに十分なもので、来年半ばとされる発売が待たれる。
そして一昨年発表されたEVの試作車群の中には、他にもユニークで魅力的なモデルがいくつも存在している。今後4年間でEV15車種をグローバル市場で展開すると発表しているのだ。これはEV市場が拡大しても、EVベンチャーにやすやすとパイを奪わせない、というトヨタの決意の現れともいえる。
国内を見れば、昨年よりトヨタは4チャンネルの販売体制による専売体制を廃止した。販売車種の整理と共に、今後はEV化が同時並行で進められることになる。販売の現場は大変だがタイミングとしては絶妙で、むしろコロナ禍など想定外の災害が重なったことは、後から見れば先に戦略を決めていた分、対応が早められたことにつながるだろう。
そしておそらくディーラーの販売拠点も整理されていく中で、充電ステーションやカーシェアリングの専門拠点といった、新たなサービスを展開していくことになる可能性も高い。EV販売の機が熟してくれば、即座に現場に対応できる。トヨタの強みをそう予測した論評は少なくなかったが、いよいよそれが現実になろうとしているのだ。
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