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日本人は、自らブラックな労働環境を望んでいるといえなくもないワケ働き方の「今」を知る(5/6 ページ)

» 2021年04月27日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

 社会保険の影響も大きい。筆者が自分の会社を設立した2007年度の健康保険料率(協会けんぽの場合)は8.20%で、介護保険料率は1.23%、そして厚生年金保険料率は14.642%だったが、2021年度は健康保険料率と介護保険料率合わせて11.80%、厚生年金保険料率は18.30%まで上昇している。労使合わせて約3割ものお金が社会保険料として報酬から引かれてしまう計算だ。ちなみに2020年度における社会保障費は35兆8608億円で、高齢化に伴う自然増だけで4111億円にものぼっている。これがわれわれ現役世代の報酬から差し引かれる料率アップに反映することになる。

 ご存じの通り社会保険料は労使折半だが、企業側にとって負担分もまた人件費であることに変わりはない。これではそもそも賃上げへのマイナス方向のプレッシャーとなるし、いくら賃上げしたくても、賃金アップに従って社会保険料負担もアップするため、働く人にとっては手取り段階でほとんど変化を実感できないことになってしまう。このように、わが国の雇用を守るための慣行や政策は全て、強烈な賃金抑制圧力として機能してしまうのだ。

画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ

結局、日本人は状況改善を望んでいない?

 先般も「平均賃金は韓国以下! 日本は貧しい国になった」と嘆く記事が話題になったが、日本の平均賃金がOECD最低水準だという事実は20年前から変わっていない。ではなぜ長年にわたって状況が改善していないのかというと、結論は「国民が望んでいないから」に尽きる。

 「国民が望んでいない? そんなワケない! 誰だって賃金アップや景気好転を望んでいる!」と思われる方も多いだろう。しかし、そのための方策を単純化すると次の通りとなる。

  • 解雇規制緩和
  • 定年制度廃止
  • 社会保険料率低下
  • 高齢者医療費負担割合増
  • 消費税増税

 眺めてみてどうだろう。明らかに反対する人が多く、これまで何度も議論の俎上に乗りながら否決されてきた案ばかりだ。ただ、確かに痛みを伴うものもあるが、その分メリットもあるのは間違いない。

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