そうした背景の中で、米インテルのCEOに就任したパット・ゲルシンガー氏が新しい戦略を発表した。最先端の半導体製造技術から脱落しかけていた(いや「していた」という方が正しいか)インテルが、2023年に量産開始を予定している7ナノメートルプロセス(TSMCの5ナノメートルに相当)を採用する工場を、米アリゾナ州で2024年までに2拠点同時に立ち上げるという。
その投資金額は200億ドルにも達する。この計画発表で、日本の半導体関連銘柄の株価が上昇したほどだ。
インテルが脱落しかけていた先端技術開発に復帰することを意味するが、同時に他社製品を受託生産する「ファウンダリ」という事業を始めると発表している。これまでインテルは自社製品しか生産していなかったが、今後はTSMCと同じように他社向けの半導体チップも作るということだ。
インテルの工場で生産するためには、インテルの生産技術に合わせて回路設計を行う必要があるため、TSMCが使えないならインテルで作ろう、と簡単に計画変更できるわけではない。しかし、彼らが本当に最新鋭の工場を2カ所も同時に立ち上げられるならば、TSMC一強の状況にくさびを打ち込むことになるだろう。
ゲルシンガー氏は最先端の半導体技術がアジアに集中している地政学的なリスクも、強調している。米国ハイテク企業の多くが最先端の半導体技術に依存している。アップルはもちろん、マイクロソフト、グーグルなども最先端技術を駆使した半導体チップを独自に設計、調達している。TSMCが米国内に工場を建設する計画を立てているものの、長期的なリスク、あるいは国際的な紛争の火種になりかねないからだ。
ゲルシンガー氏なりの、米バイデン政権に対する(支援の)アピールの一つとして、この計画をぶち上げたと考えるのが自然だろう。あるいはすでに政府には話を持ちかけているのかもしれない。
インテルが新戦略を発表した直後、日本の菅義偉首相は日米首脳会談に挑み、台湾海峡の平和について、共同声明の中で言及したのはご存じの通りだ。
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