「スペースは完全にクラブハウスのパクりだ——」
Twitterが4日に正式発表した、ライブオーディオルーム機能の「Twitter Spaces」(スペース)の正式発表でSNS上は騒然とした。2020年末には、インスタグラムのストーリー機能がモデルとなっているとみられるFleet(フリート)が追加されていることもあり、ここ半年でTwitterの機能は著しく拡大したといっていいだろう。
今回追加された「スペース」機能によれば、フォロワーが600人以上いる全てのアカウントは、アプリ上で音声チャットルームを開くことができる。フォロワーが600人いない者でもスペースに参加すること自体は可能だ。有名人やインフルエンサーの開いたスペースにファンが参加し、スペースで話されている内容を聞いたり、時としては発言も許可されたりすることもある。
スピード感と大胆さを併せ持つTwitterの実装力には目を見張るものがあるが、肝心の機能の企画部分が“流行りのアプリをつまみ食い”したようなもので、なりふり構わない感は否めない。それでもTwitterがこれらの新機能を追加する背景には、同社の売上倍増計画にありそうだ。
Twitterのビジネスモデルは、消費者側から利用料を徴収しない代わりに、そのユーザー基盤に対してマーケティングを行いたい企業などから広告費をもらうという仕組みで成り立っている。
21年第1四半期のDAU(デイリーアクティブユーザー)は1億9900万人だったが、23年第4四半期にはこれを3億1500万人まで増加させる計画を21年2月に発表したばかりだ。これに伴う売上高の伸びは、37億ドルから75億ドル以上と想定されており、文字通り“倍増”の計画である。
年あたりの平均成長率は、DAUも売上高もおよそ20%程度と、確かに一般的な相場感からすればそこまで無理のない伸び率ではある。しかし、Twitterの140文字以内で気軽に発言できるという今の枠組みは良くも悪くも完成されているため、そこまでの伸び率を達成するには新たな呼び水も必要になる。
そもそもTwitterの時価総額は4兆円を超えており、そのような規模の会社が毎年20%も伸びるとすれば、それは偉業であることに他ならない。それでもTwitterがここまで売り上げやユーザーの倍増にこだわる理由は、株式市場からの圧力にもあるのかもしれない。
GAFA、とりわけライバルのフェイスブックが13年末から60倍以上も株価を伸ばしているにもかかわらず、Twitterは14年につけた69ドルの最高値をまだ明確に超えられていない。
そんな中、昨年にはTwitterの大株主でもあるヘッジファンドからは、TwitterのCEOであるジャック・ドーシー氏の解任要求を受けたり、同ファンドが指名する4人の役員選任要求を受けたりと、マーケットからプレッシャーも大きくのしかかっている状況にある。
Twitterは、そのような事情もあって、実装スピードを高めTwitterという完成されたかに思えたSNSにさらなる増築を行っている。
冒頭で取り上げたスペースやフリートのようなパクリと言われても仕方ない機能だけでなく、独創性のある機能追加も実は多いのも事実だ。通常リツイートに加えて引用リツイートも並行で可能になったり、ニュースソースを確認せずに感想をつぶやこうとすると警告が出たり、細かなUIの更新であったりとスピード感のある開発力には好感が持てる。
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