コロナ禍で、なぜ「高級スポーツカー」が売れているのか世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2021年05月13日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

何が起きているのか

 いったい何が起きているのか。

 スーパーカーの代名詞ともいえるイタリアのフェラーリは新型コロナ発生以降、7週間にわたって工場を封鎖した。そのために、新車の販売台数は前年比で10%落ちている。

 しかし、20年の第4四半期は、販売台数が同13%増加している。収益も同15.4%増だった。工場を再開した7月〜9月の間をみても、有名なサーキットから名前をとったスーパーカー「モンツァ」モデルをはじめとする超高級車は、同15%も出荷台数を伸ばしている。

フェラーリが売れている

 さらに21年に入ると、売り上げは軒並み増加している。第1四半期で、販売台数は前年比1.2%増、純利益は同24.1%も増えていることが明らかに。フェラーリのジョン・エルカン会長はメディアの取材に、「2021年の幸先のいいスタートは、年内も続く兆候であり、フェラーリのビジネスモデルの回復力の証明でもある」と述べている。

 実はフェラーリについては、アジアや中国の拠点から、20年1月の早い段階で未知のウイルスがまん延する可能性があるとの情報をつかんで、それに向けた準備を始めていた。

 実際に新型コロナが世界的に広がると、従業員を早く安全に職場に戻せるように、工場を封鎖した直後の4月の段階で「Back on Truck」というプロジェクトを立ち上げ、ウイルス学者や専門家の協力で、従業員への感染テストなどを行った。さらには従業員に、自宅からでも利用できる相談窓口なども設置して対応した。

 要は、早く情報をつかんで、検討と準備を進めてきたことが、成功の秘けつだったということかもしれない。

 またフェラーリオーナーたちの寛大な寄付が集まったことで、従業員を解雇するどころか、給料も据え置きで支払い続けることができたという。ちょっと信じられないような話だが、これまで自分たちのスタイルを貫いてきたカリスマ的なメーカーだけに実現した現象だろう。

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