無印良品のアパレルラインに、「MUJI Labo」という大型店を中心に展開しているエッジの効いたラインがある。そのラインでは今季、ジェンダーの枠を超えたものづくりと称してユニセックスなデザインを多用している。
その中でもデザインの統合と合わせ、サイズ統合にまで取り組んでいる点に注目したい。通常であればXS〜XXLと6サイズ取りそろえるところを、XXS〜XSとS〜M、L〜XLの3サイズに集約。現在の体にあまりフィットさせないオーバーサイジングのトレンドも、この施策には影響しているのだろう。
靴と同様にアパレル商品のサイズ問題は在庫リスクを高める大きな要因。既製品である以上仕方ないことかもしれないが、購入する生活者も身に着ける商品だからこそ、色・サイズにこだわるが故、精度の高い需要予測が求められる。
ユニクロの店内処分品コーナーをのぞいてみれば分かると思うが、圧倒的に小さいサイズか大きいサイズか、両端商品ばかりが売れ残っている。販売ロスは目に見えるものではないが、アパレルの需要予測はサイズが細かくなればなるほど予測の難しさが伴う。
先に指摘した「持ち越し商品」や「定番化」ならばまだ良い方で、業界全体で廃棄処分される商品は一体どのくらいあるのだろうか。廃棄率の開示は、アパレル業界にとって長らくタブーとされている。ブランドイメージの棄損や、売り場鮮度の維持という理由からだ。しかし、本当の意味でのSDGsやESG経営を目指すならば、こうしたチェーンマネジメントを行うアパレルの負の部分について、はっきりと開示すべきではないかと思う。
近年アパレル各社は、世界的な流れの中で「環境保全」や「人権への配慮」といった部分に力を入れ出しているが、業界全体として在庫管理や衣料品の廃棄量などが課題となっている。もはや「小手先だけで耳障りが良い」イメージ戦略で突き進んでいく時代ではないような気がする。
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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