QBハウスがコロナ禍でも「客を離さない理由」 秘密はビジネスモデルにあり奥村美里「あの企業の意外なビジネスモデル」(4/5 ページ)

» 2021年05月31日 07時00分 公開
[奥村美里ITmedia]

強みの源泉力2 - お客ひっきりなし状態を生み出す人材育成とは

 「なるほど、客寄せ手法は分かった。QBハウスの顧客獲得作戦は面白い」で終わらないのが、理美容業界です。理美容業界は、他業界に比べて「お客が増えれば増えるほど、働き手が必要」な業界です。例えば、航空企業と比較してみましょう。航空企業は飛行機に乗るお客が1人増えたところで提供するサービスは変わりません。一方、理美容業界はお客が1人増えることで、最初から最後まで理美容師がいなければサービスを提供できないのです。

 業界内では、「客を獲得するよりも従業員を確保するほうがずっと難しい業界」というのが通説となっています。

 確かにQBハウスは従業員向けCMも打っていましたが、認知だけでカンタンに人は雇えるものではありません。人を確保する上で、どのような採用確保・雇用維持を行っているのでしょうか。

  • 6か月でプロのスタイリストに。(研修時間が豊富にあり、従来の美容室と違い研修時間も給料が出ます。通常、美容室は2年以上かけてアシスタントから昇進するので驚きの早さです)
  • カムバック採用(過去にQBハウスを離職した人が戻ってくると10万円支給)

 など採用施策がいくつかありました。確かに新卒や出戻りの美容師さんにはうれしい施策ですが、これだけでは美容室の人員難を逃れることはできません。

 そこで、実際に現場で働く人が働く上でポジティブに感じている点を、一次情報の宝庫である転職クチコミサイトから探してみました。その会社の組織体質や従業員の働き方が、いかようかを知ることができる転職クチコミサイトは、企業分析する上で必要不可欠です。

 すると、どうやら多くの従業員に喜ばれる側面は「月間8日休みで土日祝も休みが取れる」ことでした(旧会社の評判より)。

 「土日祝休みなんて当たり前じゃないか」と思う人がいるかもしれませんが、理美容師にとって土日祝はお客のかき入れ時。さらに、アシスタントであれば営業時間終了後にカット研修が入り、残業は伸びに伸びます。

 そのような背景があり、同社の休日制度はクチコミレビュー曰く「美容室業界では革命的」といいます。その業界での働きにくい「負」の部分を解消して雇う、良い事例です。美容室以外の人がバリュードライバーとなる業界(例えば介護・福祉、保育)でも転用できるのではないでしょうか。

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