おしゃれの象徴だったアパレルの「買い物袋」 有料化から1年で各社の対応に差が磯部孝のアパレル最前線(4/4 ページ)

» 2021年06月03日 05時00分 公開
[磯部孝ITmedia]
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レジ袋の売り上げはどうなっているのか

 今まで小売り側の当然な負担とされてきたショッパー代を、購入者の負担とすることでマイバッグの活用を促進する狙いは理解できる。しかし、徴収したショッパー代が、そのまま企業の収益に結びついて「はい、おしまい」となることに納得できるだろうか?

 環境省のガイドラインでは、売り上げの使い道について「事業者が自ら判断するものとした上で、消費者の理解促進の観点から、売り上げの使途について事業者から自主的に情報発信することを推奨する」としている。一部の小売店ではレジ袋の売上高を発表し、環境保全事業や社会貢献活動への寄付を報告をしているところもあるが、残念ながら一部の限られた企業の動きでしかないのが現実だ。

画像提供:ゲッティイメージズ

 環境問題への取り組みについて、国際社会と日本人の意識にも大きなズレが生じているような気がする。日本国民は世界有数のきれい好きで知られていて、あまり物を無駄にしない「もったいない」精神が息づいた国民性という自負を持った人が多いのではなかろうか。昔から「省エネ」とか「クールビズ」や「節電」などで夏の室温を28℃に設定するような動きもあった。「我慢」や「辛抱」は日本人の大好きな言葉の類だろう。

 潜在的に日本は環境問題においても先進国だという幻想を抱いているならば、少し考え直す必要がある。それは近年開かれた気候変動枠組み条約締国会議(COP25)において「日本の取組は不十分である」と指摘されているように、海外から見た目は厳しい。

 日本政府も先に開かれた気候変動サミットで、2030年に向けた温室効果ガス46%の削減を表明。原子力発電所の在り方や再生可能エネルギーへのシフトに取り組む考えを示した。私たち生活者も、自分たちでできることはもちろん、生活を通して関係する企業の姿勢にもっと関心を寄せるべきではないかと思う。

著者プロフィール

磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)

1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。

2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。

2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)

2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。


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