auカブコム証券は7月19日から、売買手数料などの大規模な変更を行う。通常の売買手数料を他社並みに引き下げるとともに、1日100万円までの売買手数料を無料にする。さらに、25歳以下のユーザーについては、手数料を全額キャッシュバックし、実質無料化する。一方で、従来無料としていた信用取引手数料については有料に戻し、買方金利や貸株料については引き下げを行う。
信用取引手数料の無料化など、独自路線を進めていたauカブコム証券だが、今回の大規模な手数料改定によって、競合他社との差を埋めた形だ。
通常の手数料は、それぞれ値下げし、100万円以下の取引については、5大ネット証券の中で最安値にそろえた。信用取引も、従来の無料を廃止し、他社にそろえた形だ。
現物株の売買手数料(auカブコム証券)
信用取引の売買手数料(auカブコム証券)
また、新設の「一日定額手数料コース」では1日あたりの、現物および信用取引の約定金額の合計に応じて手数料を課す。こちらも100万円までは無料とし、SBI証券および楽天証券にそろえた。
また25歳以下のユーザーの手数料も全額キャッシュバックする。これは、SBI証券と同施策であり、松井証券は手数料を無料としている。
また信用取引手数料無料化に伴って引き上げられていた、信用取引の金利や貸株料を引き下げる。一般信用の買方金利については、2.79%と競合他社を下回るコストとする。これまで手数料を課していた、現引、現渡についても手数料を撤廃する。
信用取引に伴う金利、貸株料(auカブコム証券)
また、新サービスとして「デイトレ信用」も開始する。これは返済期限が当日のみとなる一般信用取引で、競合他社は提供済み。今回、手数料などの条件も他社にそろえた形で提供する。
そのほか、大口優遇プランの条件緩和や、従来信用売り建てができなかった銘柄を売り建てできる「プレミアム料付空売り」も開始する。なお、API経由、信用ロボアド経由での取引については、信用取引手数料は引き続き無料とする。
株取引、手数料無料化の波 auカブコム、マネックスが信用取引無料に
株式の取引手数料無料化の波が急速にやってきている。先駆けとなったのは、米国証券大手のチャールズ・シュワブが10月1日に手数料撤廃を発表したことだ。SBIホールディングスは10月30日の決算発表にて、傘下の証券会社の取引手数料を今後3年でゼロにする構想を打ち出した。株式の取引にコストがかからない世界は、急速に近づいてきている。
「株式取引システムは3社くらいに収れんする」auカブコム社長、プラットフォーム化へ意欲
自社の取引システムをAPIとして提供し、プラットフォーマーを目指すとしているのが、ネット証券大手のうちの1社、auカブコム証券だ。2012年から株式取引のAPIを開放してきたが、20年7月には投信販売機能のAPI提供を始めた。さらに8月にはREST APIを使った高速発注環境を開放、10月には先物とオプションのAPIを開放、さらに他証券会社向けに貸株サービスをSaaS形式で提供するなど、矢継ぎ早にAPI提供を進めている。
なぜ今、証券業界で手数料無料化が進むのか?
証券業界の売買手数料無料化の流れが加速している。米証券大手のチャールズ・シュワブは10月1日に手数料撤廃を発表。国内でもSBIホールディングスは10月30日の決算発表にて、傘下の証券会社の取引手数料を今後3年でゼロにする構想を打ち出した。
「手数料競争しているつもりはない」信用手数料無料化のauカブコム証券齋藤社長
「手数料競争しているつもりはない」とauカブコム証券の齋藤社長が話した。手数料値下げによって競合に打ち勝つということではなく、SBIホールディングスが「3年以内に無料化」を打ち出したように、無料化は業界全体の潮流だという考えだ。
auカブコム証券、Pontaポイントで投信買付 au PAYからも購入可能に
KDDIとauカブコム証券は9月24日、Pontaポイントを使って投資信託を買付できる「ポイント投資」の提供を9月26日から開始すると発表した。1ポイントを1円として、100円以上1円単位で、auカブコム証券が取り扱う投資信託すべてを購入できる。
API提供でネット証券もコモディティ化 オンラインの陣取り合戦が始まる
コロナ禍の株価乱高下により、ネット証券各社には新規口座開設者が殺到、売買高は高い水準となり、直近のネット証券各社の業績は好調だ。しかし長期的に見れば、この業界は売買手数料の無料化という大きなトレンドのさなかにある。そのトレンドを推し進める出来事が起きた。
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