ワークライフバランスの一環として評価される男性育休だが、当初は現場は歓迎ムードではなかった。自分が取得することで、周りに迷惑が掛かるのではという心配のほか、給与が減ることへの懸念もあった。
同社の場合、育休中は無給にはなるが、一般的に育休中には雇用保険が支給されるほか、社会保険も一部免除される。こうした育休中の金銭面について、社員の理解は不十分だった。
こうした不安を払しょくするため、育休中の手取り額を試算し説明。「育休を取ってもこれだけ手取りがあるのなら」「状況によっては、育休を取った方が手取りが増える」と、社員は好感触だった。
一般的に、育休取得時には業務の引継ぎが問題になる。管理職クラスになればなおさらだ。同社で育休を取得した男性社員はほとんど20〜30代のため、管理職の取得実績はまだない。しかし、当時の係長職(現在は課長職)社員が取得を申請した際は、当時の上長と相談して計画的に取得できた。
「介護休暇は親が倒れるなどして突発的に始まることが多いが、育休は未来の話だから計画を立てやすい」と岡部氏は話す。いつごろ育休を取るか計画したり、家庭環境を考えて、例えば妻が里帰り出産から戻ったら取得しようと計画したりできる。上司と相談のうえ、他部署にヘルプをお願いしたり、一時的に派遣社員を頼むこともある。
先進的な取り組みの多い同社だが、女性活躍推進に関しては「まだまだ遅れている」(岡部氏)。現在の同社には、女性の係長は1人、主任は数人いるものの、課長職以上の管理職はいない。
近年は変わってきているが、長い間「男性はメイン業務、女性はアシスタント業務」という割り振りがあった。また、女性に限らず全社的に部署間の流動性はあまりないため、部署異動に対して「これまでの部署で活躍できなかったから異動させられたのでは」という誤解があった。
この影響か、「今の仕事の範囲でいい」という考え方の社員が多い。同社は、女性活躍推進の本来の目的は「女性が自分らしさを発揮して活躍すること」と考えており、現在の業務でのスキルアップを目指す考えも尊重したいとしている。一方で、自分の可能性を限定せずに、他の職種や管理職にチャレンジすることも選択肢に加えてほしいと考えた。
女性活躍推進に伴い、性別問わず活躍している人を評価するという指針のもと、評価制度も刷新した。何をしたら評価されるのか、どうしたら上の等級に上がれるのかを明確化することで納得感を醸成し、仕事へのやる気に結び付けるねらいがあった。
新制度では社員をスタッフ層、リーダー層、マネジメント層の大きく3つに分ける。21年4月に新制度のもとで社員の等級を見直し、同社の下期の始まりとなる7月から運用する。
現状維持志向を打破するため、21年度からは体系的な教育制度の構築も進めており、女性社員に対するキャリアデザイン研修を計画している。来年にも、女性に限らず若手社員全体に拡大予定だ。女性社員は適性検査の結果をもとに自分の能力の開発研修を受け、上司にも部下の性質を理解して指導するようフィードバックする。
新評価制度への移行に伴い、チームビルディングなどの技術習得を目的としたリーダー・管理職向けの研修なども構想中だ。今年度は外部講師を招くが、来年度以降は社員が講師を務められるよう、指導役を育成していく。
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