ベンチャー企業から見た場合、SPAC上場を利用する最大のメリットはその簡単さだ。通常1〜2年かかるのが普通の上場審査に比べ、SPAC上場では5〜6カ月で上場に至ることができる。上場審査にかかる規制負担も必要ない。
「買収されたら上場会社になる。通常の上場に比べてハードルが10分の1になり、上場資金を使って体制をきれいに整えることができる。ベンチャーから見るとかなりエグジットが簡単になる」と、ウッザマン氏はメリットを話す。
米国では売上高100億円が上場の基準といわれており、8〜9割のベンチャー企業はその規模に達する前に、どこかの企業に買収されることでエグジットを果たしてきた。しかし、SPACを利用するとこの規模でも上場を果たすことができるようになる。ベンチャー企業において、エグジット先の選択肢が広がることから、ベンチャー企業の活性化につながるというメリットもいわれている。
また投資家にとっては、上場したSPACの株を購入することで、実質的に未上場企業に投資できるという点が人気となっている。
一方で、SPACは「裏口上場」とも揶揄される。上場時の会社は実態のない“空箱”なので、事務処理は簡素化されており、透明性が低い。SPACがどのベンチャー企業を買収するかはSPACのマネージャーの手腕にかかっており、非常にリスクの高い投資となる。
ウッザマン氏はSPACの課題を次のように話す。「15年以降に公開された89のSPACの18.5%が、投資家にとって損失となった。また、多くのSPAC投資家は手っ取り早い現金を手に入れることを優先するので、会社を長期的に保有するつもりがない」
あまりにもSPACが増加したので、買収先が見つからないことも課題になってきている。「買収先がないSPACが数百件出てきている。SPACが上場しているのに買収企業がないというのが大きな問題だ」(ウッザマン氏)
SPAC上場が普及すれば、通常上場時の厳しい審査は何だったのか? ということにもなりかねない。ウッザマン氏は世界的にSPACが規制緩和されるなかで、通常の上場も含めた規制の見直しも必要ではないかと話した。「通常の上場がスピードアップできれば、SPACと同様に考えられるようになる。上場は審査がどこの国でも厳しいので、どうしても短時間でもっと簡単なプロセスのSPACにいってしまう。SPACも、もう少し規制を強化することでバランスが取れるのではないか」
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