ネットフリックス通販参入が、「日本のコンテンツ産業衰退」を早めるワケスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2021年06月16日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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変わることができない

 このように苦しくなればなるほど頑なに「現状維持」にしがみつくカルチャーが強い日本のコンテンツ産業が、ネットフリックスのような「広告に頼らないコンテンツビジネス」へとスムーズに移行していける、とは残念ながら思えない。

 「日本には日本のやり方がある」「システムを急に変えたら弱者を切り捨てる」とかなんとかもっともらしい言い訳をつけて、「じっくりと冷静な議論が必要だ」とか言って結局、「何もしない」といういつものパターンになるのではないか。

 日本が「現状維持」を続ける中で、世界のコンテンツ産業はすさまじいスピードで進化している。5月にはアマゾンが米大手映画会社MGMの買収を発表した。Amazonプライムビデオで流すコンテンツの調達が目的という話だが、MGMのドル箱には「007」シリーズがある。この作品は毎回、アストンマーティンなどの高級外車や、最新ガジェット、ラグジュアリーブランドなどがこぞってプロダクトプレイスメントする世界有数の「ブランドマーケティング映画」でもあるのだ。

MGMを買収したアマゾンは、何を企んでいるのか(写真提供:ゲッティイメージズ)

 ビッグデータを駆使する物流の巨人がこのような作品を傘下に収めたことは、従来の「広告依存」とは異なる映像作品を用いたマネタイズを見据えているのでは、と個人的には思ってしまう。

 いずれにせよ、大手広告代理店と民放キー局が主導して「制作委員会」をつくってカネを集めるようなスタイルは、アマゾンやネットフリックスからすれば完全に「時代遅れ」であることは間違いない。

 よく日本人は「変化を恐れる」と言われるが、「変わることができない」という表現が正確だ。海外市場でまったく勝負ができていない日本の映画やドラマの衰退は、そんな日本の厳しい現実を、もっとも分かりやすい形でわれわれに突き付けているのかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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