コロナ禍でも業績絶好調――BANDAI SPIRITSが新体制になって目指すこと(3/3 ページ)

» 2021年06月22日 07時00分 公開
[しげるITmedia]
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今後の鍵は海外展開。事業部を横断して取り組む

 宇田川氏が考える今後のBSPの事業展開の鍵は、海外での売り上げを向上させることにある。近年のBSPは定番IPに加え、マーベル系のアメコミ映画やスター・ウォーズなどの海外IPを積極的に商品化している点からもそれは伺える。

 「グローバル展開できるIPの商品化は、BSP全体として今後も狙っていきます。現在、海外での売り上げは全体の35%にとどまっているんですが、これをまずは40%まで向上させたい。グローバルな市場と比べると国内はほんの一部なので、そこは全社で取り組む課題です」

 バンダイナムコグループが21年4月に実施したユニット体制の再編も、海外展開も見越したものだった。これまでは「トイホビー」「ネットワークエンターテインメント」「リアルエンターテインメント」「映像音楽プロデュース」「IPクリエイション」の5ユニットだったが、「トイホビー」と「ネットワークエンターテインメント」、「映像音楽プロデュース」と「IPクリエイション」が統合され、3ユニットに再編された。これによって、事業分野をまたいだリソースの投入や、海外展開に関する機動力の向上などを見込んでいる。

バンナム 新体制 4月からの新体制。BSPが所属するエンターテインメントユニットは、デジタル事業(統括:バンダイナムコエンターテインメント)とトイホビー事業(統括:バンダイ)の2本柱

 「例えば、世界展開するIPを定めて異分野がまとまって行動することをこれまではなかなかできませんでした。投資に関しても各社がそれぞれの事業拡大を目的にしていました。しかし、今後はグループとしてどこにお金やリソースを投入するかを決められます」

 ユニット統合の大きな目標が、どうしても事業部ごとの縦割りになりがちだった商品開発やプロモーションを、各分野を横断してできるようになることだ。社長というポジションは、そのために大ナタを振るえる立場でもある。

 「社員からすると、自分の仕事があって自分が所属する会社があってということになるので、目の前の仕事に集中しがちです。ただ、グループがユニットとしてどうなっていくかを考えるにはより大きな視点が必要になるので、私はそこを先導しなくてはいけないと思っています。当社グループの強みでもありますが、事業部が強くて連携という当たり前のことが全然できなかったんですよね……」

 「考えてみれば、世界的に見てもこれだけいろいろな出口を持っているグループ企業はあまりないんです。だったら、もうグループ全社を横断して全部やろうと。流行のIPを商品化するのは、グループ全体的に得意なんですよ。BSPで一番くじやプライズを手掛けている事業部も人気になりそうなIPを見つけてくるのは早くて、それでファンがついたところで他の事業部から商品化することはよくあります。例えばそういった取り組みを、もっと大規模に展開したい」

 宇田川氏の話からは、「ブランド力の強化と独自のIPを新規開発し、関係各社を横断しながら海外への展開を図る」という方針が見えてきた。“世界一の総合ホビーエンターテインメント企業”を掲げるBSPの今後に注目したい。後編では、バンダイに入社後、数度の転籍を経て、BSP社長に就任した宇田川氏の軌跡に迫る。

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