40代のバンナム女性幹部はなぜ、突然BANDAI SPIRITSの新社長に抜擢されたのかゲーム事業からプラモデル・フィギュア事業へ(2/3 ページ)

» 2021年06月23日 07時00分 公開
[しげるITmedia]

――以前にも“女性初”のBNE取締役で注目を集めました。

 周りが男性だらけなのは今までずっとそうでしたし、性差を考えて仕事をしたことはあまりありません。グループ全体的にそれぞれの人の強みや特徴を生かした仕事をする意識があるので、性別が原因の苦労をしたという記憶もないんです。

――バンダイナムコグループの社風として、性別よりも仕事への意欲や実力を重視するところがあるわけですね。

 そうだと思います。女性だから選ばれたわけでもないでしょうし。自分のやりたい仕事の範囲を増やしていくには、男女問わず得意な分野をはっきりさせた方が当社グループではプラスに働くと思います。それが全体の成長のために必要な能力であればリーダーを担い、現場での仕事に重きを置いていればそういうポジションが与えられる。ただ、実際のところ現場担当の方が大変だと思うんですよね。振り返っても以前は本当に忙しくて気が休まらなかったし、今の方が全然いいです(笑)。

――現場でのお仕事についていえば、宇田川さんは現場ではネットワークやゲーム系のお仕事が多く、プラモデルやフィギュアといった商品の企画や設計のお仕事はあまりタッチしてこなかったかと思いますが、BSPの事業を進める上でその点についてはどう感じていますか?

 私もこれまでずっとキャラクターに関する仕事をしてきましたが、実際の商品を作るところは現場に任せつつ、今後は「この商品をどれだけ多くの人に届けるか」を考えるのが自分の仕事だと思います。ゲーム・ネットワークの事業で培った経験、特にグローバルに届けることでは過去の仕事がつながってきます。

――「届ける」ことの他に、今後進めていきたい仕事はありますか?

 会社において大きく変えなければいけないこと、事業部をまたいで取り組むべきは何なのかを見極めることです。現場のさまざまな案件は事業部ごとに任せますし、社員も各自の仕事は見えていて、それを伸ばす意欲を持っているでしょう。ではその仕事が数年後に会社としてどのような強みになっているか、企業単位で見たときにどのような方向に伸ばしていけばいいかを決めるのが私の仕事です。

――今おっしゃられたような仕事を進める上で、これまでのご経歴は強みになりそうですね。

 はい。事業拡大と業務改善は得意分野です。顧客視点を忘れず客観的視点から結論を導くことをモットーにしています。

――転籍を複数経験したことのメリット、デメリットは何でしょう?

 方針、規模、文化、人材要件など同じグループでも会社ごとに異なるので、より多くの価値観に触れられたことは非常に良かったです。それぞれに意味があると分かると視野が広がります。また、強制的に新しいことを学ぶ必要が出てくるので成長も促されますし、知り合いが増えて結果的に仕事もしやすくなります。デメリットはあまり感じませんが、以前の会社でもっとこれをしておけば良かったと思うことはありました。ですので、後悔なくやりたいことは早く、全部手掛けたいです。

――「基本的に仕事を断らない」とのことですが、過去に“適性がない業務”を任されたと感じたことはなかったですか? また、そういった思いを抱いているビジネスパーソンにアドバイスがあればお願いします。

 今の仕事を全力で行い結果を出さないと、自分のしたい業務も任されないと思っています。ただ、一度だけ、受託案件より自社案件をやりたいと直訴したことはあります。自身の力を短期的な利益より長期的に自社に還元できるような案件に使いたかったからです。そのときは「じゃあ両方やりなよ」となりました。

 自分で起業したり転職するより、やりたい業務が会社やグループにあるからずっと働いてきました。業務自体より、会社の理念やパーパスに共感できるという状態があるかで仕事はした方が良いと思います。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.