10年で116万台減少! 「世界一の自販機大国ニッポン」はなぜ衰退したのかスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2021年06月23日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

気がついたら遅れていた

 今年3月、日本では有名店のラーメンを買うことができる冷凍自販機「ヌードルツアーズ」ができたと話題になったが、米国では既に「できたてのラーメン」が出てくる自販機が市民権を獲得しつつある。

有名店のラーメンを買うことができる冷凍自販機「ヌードルツアーズ」

 15年に設立されたシリコンバレーのフードテック企業「ヨーカイ・エクスプレス」の自販機だ。空港、大学、ショッピングセンターなどに設置されているこの自販機は、わずか45秒で調理された、ラーメン、うどん、フォーなどが出てくるという優れもので全米で急速に展開しており、18年にはテスラの工場にも導入されて、イーロンマスクにドヤされる従業員の癒しになったと話題になった。

 今年8月には日本上陸するということで、「ミシュランガイド東京」にも掲載された名店「麺処 びぎ屋」など日本のラーメン店とのコラボレーションすることも決まっているという。

ヨーカイ・エクスプレスの自販機「オクトシェフ」が日本に上陸(出典:ヨーカイ・エクスプレスのFacebookページ)

 さて、ここまで言えば、日本の自販機の「衰退」が「数」だけはない、と申し上げた理由が分かっていただけたのではないか。「全国どこでも温かい缶コーヒーや冷たいジュースが買えるなんて、日本の自販機は進んでる!」と得意になっているうちに、気がついたら世界のスマート自販機という新たな潮流に乗り遅れてしまっていたのだ。

 日本が「スマート自販機後進国」だということは、残念ながら隣の韓国を見ても分かる。

 韓国ではIoTの進化によって、サムギョプサル用の牛肉、コスメ、文学作品を販売するスマート自販機が登場している。また、同じような技術を用いて「スマート図書館」も増えてきている。スマート図書館とは、地下鉄の駅やバスターミナルなどに設置している400冊から600冊ほどの図書を備える自動貸出機のこと。タッチパネルで借りたい本のタイトルや著者、出版社を検索できるようにし、借りたい本をスマートフォンで予約することも可能とした。

 韓国・文化体育観光部によれば、スマート図書館は、国内57カ所設置されている。コロナの感染拡大で図書館が休業となった際には大いに役立ったという。

 韓国の自販機ビジネスは、ロッテが日本からコーヒー自販機400台を導入したことがきっかけとされている。このほかにも日本モデルを導入したビジネスが多くあるので、どうしても日本人は「韓国は日本より遅れている」という先入観が強い。だが、いつの間にやら「本家を追い抜かしたサービス」もある。スマート自販機もその一つだ。

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