飲食店は“大荒れ”なのに、なぜニトリはファミレスに参入したのかスピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2021年04月18日 07時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

 「なんでよりによってこのタイミング?」と首をひねった方も多いのではないか。コロナ禍で飲食店が大打撃を受け、経営が苦しくなった店がバタバタと倒れていくなか、ニトリがファミレス事業に進出したのだ。

 チキンステーキ240gを500円、ハンバーグステーキ150gを700円、リブステーキ150gを990円という感じで、「お、ねだん以上。」のメニューを取りそろえた「ニトリダイニング みんなのグリル」だ。

「ニトリダイニング みんなのグリル」のメニュー(出典:ニトリ)

 3月18日に東京都内のニトリの環七梅島店の敷地内にオープンしたことに続いて、4月27日には神奈川県相模原にあるニトリモールの近くで出店が控えているという。

 この出店のロケーションからしても、ニトリがファミレス単体で稼ごうと思っていないことは明らかだ。昼ごはんでも食べながらゆっくり家具を見てもらう。あるいは、食事のついでに足りない生活雑貨を購入する。そんな来店頻度の向上策の一つであることは容易に想像できる。

 が、それにしたってタイミングの悪さは否めない。どちらの店舗も「まん延防止措置」の対象地域なので、時短はもちろん厳しい感染対策が求められる。稼ぐことが目的ではないのなら、ワクチンがある程度普及するまで延期という選択もあったはずだ。もし慣れぬ新規事業で、クラスターでも発生させてしまったら世間から批判を浴びるかもしれない。企業イメージや店舗にも悪影響を及ぼすかもしれないリスクのある新規事業を、なぜこのタイミングでわざわざ断行したのか。

 「いろいろと時間や金をかけたプロジェクトのスケジュールを、簡単に変えられるわけないだろ」という声が聞こえてきそうだが、コロナ禍によってさまざま企業がプロジェクトの見直しを余儀なくされ柔軟に対応している。34期連続で増収増益を達成する家具業界のトップ企業が、そんな頭コチコチな役人のような感じで、なし崩し的に新規事業を始めるわけがないのだ。

ニトリ、34期連続で増収増益(出典:ニトリ)

 ということは考えられるのは、コロナ禍の大逆風のなかであっても、ニトリにはこのタイミングでファミレスに参入をしなければいけない事情があったということである。では、それはいったいなんなのか。

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