飲食店は“大荒れ”なのに、なぜニトリはファミレスに参入したのかスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2021年04月18日 07時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

カインズ侵攻に備えた反撃

 これまで東京都内の客がなかなか手に取ることができなかったカインズのアイテムが繁華街の商業施設で並ぶようになれば、ニトリの地位が脅かされることは間違いない。そうなるとニトリとしてやるべきは、カインズ侵攻に備えた反撃だ。

 昨年、ニトリがDCMとの争奪戦に競り勝った「島忠ホームズの買収」もその一つではないかと目されている。首都圏を中心に販売網のある島忠ホームズは中野、仙川、平井、葛西など都内にも店舗を持つ。これらを手中に収めれば、カインズが都心へ本格的に進出してきた際の迎撃の拠点となる。実際、今年の6月には既存店を改修して「ニトリホームズ」(3月31日の決算説明会で明かした候補名)をオープンする予定だという。

ニトリは「島忠ホームズ」を買収した(出典:ニトリ)

 つまり、コロナ禍という大逆風のなかでも、リスクのあるファミレス参入を進めたのは、ニトリとして急ピッチで「対カインズ反撃体制」を整えなくてはいけない事情もあったのではないか、と個人的には思うのだ。

 なんてことを言ってしまうと、「ニトリにとってカインズが脅威だとしても、だからといってファミレス参入の理由をそこに結びつけるのはさすがに妄想が過ぎるだろ」とお叱りをいただくかもしれないが、もしニトリがカインズを意識して、“がっぷり四つ”で戦っていこうと思ったら、ここはいち早く整備をしなくてはいけない分野なのだ。

 似鳥会長が目指す「衣食住での事業展開」を既に達成してしまっているのが、カインズだからだ。

 ご存じのように、カインズは、群馬県地盤のスーパー、ベイシアを中核とするベイシアグループの一員だ。同じグループ内には、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのワークマンがあるし、カインズ内のフードコート「カインズキッチン」などを運営する外食企業カインズフードサービスもある。

ベイシアグループ

 さらににいえば、家電量販店のベイシア電器、コンビニのセーブオン、カー用品のオートアールズ、ベイシアスポーツクラブなどもあり、全国46都道府県でグループ全28社が1904店舗を展開している。非上場がゆえあまり全国的に話題にはならないが、昨年ベイシアグループは総売上1兆円を達成した。

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