飲食店は“大荒れ”なのに、なぜニトリはファミレスに参入したのかスピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2021年04月18日 07時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

ファミレス参入の理由

 そんな知られざる「衣食住の巨人」ともいえる、ベイシアグループの中核企業・カインズがいよいよ首都に攻め込んできたのだ。これを単に「ホームセンターが進出してきた」と捉えるのはあまりにもお気楽すぎる。

 グループメリットを生かして、首都圏でも絶大な人気を誇るワークマンプラスなどとコラボすることもできるだろう。カインズキッチンを進化させた都市型フードコートを併設することもできるだろう。

 また、米国の体験型店舗「b8ta」とコラボしたように、カインズ独自開発のユニークなアイテムを実際に手に取ってもらい、それをマーケティングや開発に生かすRaaS(リテール・アズ・ア・サービス)の拠点を整備することもできる。中長期的には生活雑貨、衣料品、飲食店、さらには食料品までを同一のコンセプトのもとで提供する、「ライフスタイル総合店舗」を出すことも可能だ。

 つまり、カインズは現時点のニトリではなかなかできない方向性の戦い方ができるだけではなく、似鳥会長が目指す「衣食住での事業展開」を可能とする力もあるのだ。ここを迎え撃つニトリとして、まずは「衣」と「食」は急ピッチで追いつかなくてはいけない。

グループメリットを生かして、どんなことをしてくるのか(画像はカインズ朝霞店)

 「衣」に関して、「N+」は女性向けアパレルなので早急に男性向けがほしい。幸いにも、買収をした島忠ホームズにはオリジナルのアパレルブランド「カラビナ」がある。こちらは「プロ仕様のワークウェア」を掲げながら、無印良品のようなベーシックなデザインで、ワークマンのアイテムと比べても機能性はそれほど遜色はない。マーケティングや宣伝にそれほど力を入れているとは思えないので認知度はあまりないが、「ニトリホームズ」のシナジー効果で大化けしないとも限らない。

【訂正:2021年4月26日午前8時0分 初出で『島忠ホームズにはオリジナルのアパレルブランド「カラナビ」がある』と記載していましたが、「カラビナ」の誤りでした。お詫びして訂正いたします】

 となってくると、やはり次に必要となってくるのが「食」ではないのか。それこそが、これまで敷地内に大手ファミレスや人気チェーンを誘致する方向性だったニトリがこのタイミングで、ファミレスに参入をしなくてはいけなくなった最大の理由なのではないか、と個人的には思っている。

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