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» 2021年06月30日 09時25分 公開

「安いニッポン」の本当の恐ろしさとは何か 「貧しくなること」ではないスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

[窪田順生,ITmedia]

「脱出」する日本人

 それを裏付けるデータもある。2019年10月1日現在の推計で、在留邦人総数は141万356人。前年より1万9986人増えて、この統計を開始した1968年(昭和43年)以降最多となっているのだ。

 では、これから「安いニッポン」に見切りをつける人々はどこへ向かうのかというと、やはり「本命視」されているのは経済成長著しい中国だ。一橋大学名誉教授の経済学者・野口悠紀雄氏は「20年後には日本人が中国に出稼ぎする」(毎日新聞 20年1月4日)と未来を予見する。実際、今回の日経の「安いニッポン」の中でも、以下のような「中国への出稼ぎ日本人」が登場する。

 『「月給9万円」低賃金放置 アニメ産業、中国に人材流出』(6月24日)

 ご存じのように、日本のアニメは世界的に評価も高いが、それを制作しているアニメーターの賃金は常軌を逸した低賃金だ。日本アニメーター・演出協会の調査では、年収が400万円以下が54.7%にのぼり、中小零細の若手となれば月給9万円もザラだという。そんな低賃金・重労働に嫌気がさして、作品の質も上がるなど成長著しい中国のアニメ市場へ人材が続々と流出しているというのだ。

(提供:ゲッティイメージズ)

 そして、このような「出稼ぎ日本人」が中国や東南アジアなど海外に進出すればするほど、ある問題が深刻化していく。それは、「日本人出稼ぎ労働者の「命」や「人権」の軽視だ。

 どのような国であっても、多かれ少なかれ「ナショナリズム」というものがある。そのため建前的には「世界は一つ、人類みな兄弟」と言いながら、自国の労働者と、他国からの出稼ぎ労働者の待遇に差をつける問題がどうしても生じてしまう。

 もちろん、高度な知識や技術のある人は、そのような不安はないだろう。ただ、「安いニッポン」が進行していけば、「出稼ぎ」するのはそのような優秀な人ばかりではなくなっていくはずだ。

 貧しい国から出稼ぎに来ていることで足元を見られ、自国の人間が嫌がるような仕事を押し付けたり、長時間労働を強いたりすることもあるだろう。あるいは、自国の人間だったら絶対にしないようなセクハラ、パワハラ、イジメのターゲットになってしまうかもしれない。

 つまり、「賃金の高さにつられてやって来ている外国人」がゆえ、危険な仕事や過酷な仕事を強いられたり、人種差別の被害にあったりする恐れがあるのだ。

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