「安いニッポン」の本当の恐ろしさとは何か 「貧しくなること」ではないスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2021年06月30日 09時25分 公開
[窪田順生ITmedia]

「安いニッポン」は買い叩かれ

 10年後、20年後、「安いニッポン」に見切りをつけて、中国や東南アジアに「出稼ぎ」にいくであろうわれわれの子どもや孫たちが、異国でどのように辛い目に遭うのかは、容易に想像できよう。

 そんな恐ろしい未来を予見させるようなデータもある。

 20年の外国人労働者の死傷者数は4682人で、うち死者数が30人。外国人労働者の総数が増えている中でこれはさらに増えていく見込みだが、問題は日本人労働者と比べた割合である。

 厚労省の労働災害発生状況などを基に両者を比較した、NPO法人POSSE代表で雇用・労働政策研究者の今野晴貴氏によれば、製造業では、外国人労働者が日本人労働者の約2倍の割合で労災に遭っており、建設業にいたっては、2倍以上の割合だという。

 言葉の壁があって危険を回避するためのコミュニケーションがうまく取れていない。外国人労働者ばかりが危険な仕事をやらされている……などいろいろな要因があるだろうが、全て突き詰めていけば、外国人労働者の「命」が軽んじられていることに集約される。

 つまり、「安いニッポン」が進行していけば因果応報で、今度はわれわれ日本人労働者が「命」を軽んじられる側にまわるかもしれないのだ。

平均年収(職種別、出典:DODA)

 多くの人は忘れてしまっているだろうが、ほんの3年ほど前、マスコミに立派な評論家センセーたちが登場して、「賃金の高い日本で働きたい外国人は世界にたくさんいますよ」「これからは外国人材を活用して人手不足の解消すべき」なんてことを言っていた。

 しかし、残念ながらこれらは「ご都合主義的な願望」というか、「妄想」に過ぎなかった。今や「安いニッポン」は買い叩かれ、アニメや半導体などの分野から次々と人材が流出している。外国人材の活用どころか、自国人材すら活用できていない体たらくである。

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