例えば、先ほど紹介したようなケースで、日本国内で月給9万円しかもらえなかったアニメーターが、中国のアニメ会社に3倍の給料で就職をしたとしよう。このアニメーターが突出した素晴らしい技術を持っていれば、国籍など関係なくそこで着々とキャリアを積んでいくだろう。
しかし、同じ給料の中国人アニメーターとそれほど技術に差がなかったらどうか。中国人アニメーターより冷遇されるかもしれない。過酷な仕事をやらされたり、パワハラを受けたりするかもしれない。日本と比べて破格に高い賃金を払ってくれるこの会社で、雇ってほしい日本人アニメーターははいて捨てるほどいるからだ。
そこでもしこの日本人アニメーターが上司や経営者に文句を言っても、こんなことを冷たく言い放たれてしまうかもしれない。
「嫌なら辞めてくれて結構ですよ。中国で働きたい日本のアニメーターはたくさんいますから」
「荷物まとめてさっさと日本に帰れ!」
いくらなんでも妄想が過ぎるだろ、と思う人もいるかもしれないが、ちょっと胸を当てて考えていただきたい。実はわれわれはこのようなケースが、世の中にはよくあることを誰よりもよく知っている。
そう、日本に「出稼ぎ」に訪れている技能実習生などの外国人労働者が直面している問題がまさしくこれなのだ。
20年10月、群馬県内の農業法人で働いていたスリランカ人女性が、雇い主から常習的に暴行を受けていたと告発。農業法人の社長の息子から怒鳴りつけられた音声データが、群馬県庁で開かれた記者会見の場で公開された。
「嫌だったらスリランカに帰れ」
「いらねえよ、てめえなんか」
スリランカの女性は会見で「優しい安全な国というイメージが、暴力を受け、日本ってこういう国なのかと思うようになってしまった」(上毛新聞 20年10月17日)と述べている。日本でさえこの有様なのだから、どこの国でも「外国人労働者」には同様の問題が起きるということだ。
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