「ん? 服を買っているかって? ウチの会社はテレワークなので、仕事着はあまり買わなくなったなあ」「Tシャツくらいしか買ってないや」といった人も多いのかもしれない。
Tシャツしか買わないというのは、ちょっと大げさかもしれないが、データを見ると「ふむふむ、そうかも」とうなずける部分もある。国内のアパレル市場は、バブル期に15兆円を超えたものの、その後はじりじりと減少傾向に。ピークから約6兆円が蒸発し、現在は9兆円ほどに。新型コロナ感染拡大などの影響を受け、ワールドもTSIホールディングスも三陽商会もオンワードホールディングスも、次々に店舗を縮小している。
もちろん、全てのブランドが低迷しているわけではない。ユニクロなどを運営するファーストリテイリングの直近の決算は、増収増益。ワークマンもしまむらも好調である。
そんな状況の中で、筆者が気になっているブランドがある。身長155センチ以下の小柄女性に向けた「COHINA(コヒナ)」(運営:newn)である。身長173センチで、男性――。筆者はターゲットから大きく外れているのに、なぜ「気になっている」のか。売れに売れているからである。COHINAのことを知らない読者(特に男性)も多いと思うので、簡単にブランドのことを紹介しよう。
同ブランドは2018年1月に誕生した。身長148センチの田中絢子さんと、清水葵さん(共同創業者でディレクター)の2人が「身長が低い私たちでも、ジャストフィットで着れる服がほしい」という思いで立ち上げた。店舗を持たない、いわゆるD2C(ECサイトを通じて直接販売すること)である。
2人ともアパレルで働いた経験はなし。インターンもなければ、アルバイトもしたことがない。しかも、大学生のときに会社を立ち上げた。右も左も上も下も分からないなかで、どうやって創業したのかというと、「ググって、ググって、ググって」(田中さん)とにかく、調べまくったそうである。業界で働くプロからすれば、「素人の2人が集まって、何ができるんだ? この世界は甘くはないぜ」と冷たい視線を投げかけていたかもしれないが、徐々に存在感を示し始めたのだ。
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