コロナ危機をきっかけに日本型雇用の見直しが一気に進もうとしている。日本の雇用は「メンバーシップ型」などと言われているが、実際にはメンバーシップ型などという型はなく、日本だけが特殊な雇用形態だったに過ぎない。結局のところ、日本は諸外国と同様、業務に対して賃金を支払うという、ごく普通の雇用形態に戻るだけであり、まじめに働いている労働者にとってそれは悪いことではない。
日本企業ではこれまで、終身雇用が保障されているのがタテマエとしてあった。現実に終身雇用が維持されているのは大企業とその関連会社だけだが、それでも多くの労働者が失業の心配をせず働くことができた。だが社員の面倒を一生見る仕組みは、経済が半永久的に成長することが大前提の制度であり、一般論として持続不可能である。
企業は10〜20年後ごとに事業内容を見直す必要があるが、新規事業に取り組む際にはどうしても新しい人材が必要となる。だが終身雇用の場合、新規採用を行っても解雇することはできないので、社員の総数は増える一方となる。
日本の場合、終身雇用かつ年功序列なので、一定の年齢に達した人はほぼ自動的に管理職に昇進させている。このため管理職ばかりが増える状況となっており、1980年代に全体の21%程度だった管理職比率は、2010年代には26%まで上昇した。読者の皆さんが勤務する組織でも、「管理職」と呼ばれながら実際には管理職の仕事をしていない、いわゆる「名ばかり管理職」がたくさんいるのではないだろうか。
近年、企業が役職定年や早期退職プログラムを強化しているのは、組織の肥大化が限界に達しており、現状を維持することがもはや不可能となってきたからである。
大手電機メーカーのパナソニックが、中高年社員を対象とした早期退職に踏み切るニュースが話題となっている。「事業は人なり」をモットーに掲げ、雇用維持を何よりも重視してきたパナソニックですらこうした状況であり、コロナ危機が一段落すれば、多くの企業が続々と人員整理に踏み切るだろう。
ビジネスパーソンの中には不安を抱えている人も多いかもしれないが、まったくといってよいほどスキルがない人や、管理職とは名ばかりで若手の邪魔をしてばかりいるような人を除けば、新しい雇用形態はそれほどひどいものではない。それは諸外国のケースを見れば明らかである。
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