株価3指数いずれも最高値はバブルか? コロナ前を超えてきた経済の読み解き方(2/2 ページ)

» 2021年07月13日 17時17分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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経済へのリスク

 この好調な経済を支えているのが、前トランプ政権と現バイデン政権で行われた5.7兆ドルの財政政策だ。雇用が完全に回復していない、つまり給与が上がっているわけではないのに消費だけが伸びているのは、ばら撒かれた支援金や給付金の効果だ。

 そして家計に渡されたお金がすべて使われてしまったかといえば、そんなこともない。高い貯蓄率が示す通り、お金は銀行口座に眠ったままだ。つまり、今後しばらくは配られたお金の使用が続き、消費が活況なことから企業業績の好調は続く。「まだ失業手当の上乗せも続いているし、財政でもらったお金でモノを買うことの不安感が低い。残っている貯蓄を使って、2年、3年スパンで、小売り、飲食、旅行で支出が続くという見通しが、現在の株式市場に織り込まれている」(神山氏)

 では、リスクはどこにあるのだろうか。1つは「貯蓄率」だ。米国家計の貯蓄率は、給付金の影響で高い状態にある。これを徐々に取り崩して消費に充てることを市場は織り込んでいる。「コロナ時の消費は耐久消費財にいっていた。冷蔵庫の買い換えなどが一巡し、自動車も一巡。これから(ワクチンの普及により)飲食も旅行も行きやすくなる」(神山氏)からだ。ただし、もし貯蓄率が下がらずに横ばいだと、将来の消費が冷え込むことを意味し、リスクとなる。

 2つ目はワクチンだ。接種率がまだ低い日本とは違い、米英では接種が進んでいる。「感染者数が多少増えても、重傷者が少ないので普通の生活にしてしまうというのが英国の方針だ」(神山氏)。米国などでもこの流れが継続することを市場は見込むが、もし変異株などによりワクチンの効果が薄れることがあれば、リスクとなる。

 3つ目は増税だ。バイデン政権は追加の経済政策として、インフラや研究開発などに2兆ドルを投じる米国雇用計画を打ち出している。また、医療や育児などの支援策として1.8兆ドルを投じる米国家庭計画も予定している。これらが従来のコロナ対策と違うのは、財源を増税でまかなうことだ。米国雇用計画は企業増税で、米国家庭計画は富裕層増税を財源に充てる。

米国財政政策(日興アセットマネジメント)

 ただし神山氏は、このリスクが顕在化してくるのは22年になるだろうと予想する。「バイデン政権は共和党に融和的だ。企業減税はトランプ政策のレガシー(遺産)なので、バイデン政権も増税は後送りにしようとしている。先にインフラ投資をやり、増税は後にする見通しだ。本格的に論争になるのは、中間選挙のときだ」

 そのほかのリスクとして、政策金利の利上げとテーパリング(量的緩和の減速)はどうか。「22年6月まで政策金利の利上げはないだろう。内部で検討した複数のシナリオでも議論の対象にならないくらい一致した想定だ」と神山氏。

 長期金利も安定するとみている。「長期金利は、1.9%だったのがコロナショックで大幅に低下して0.5%まで下がった。その後、財政や景気の回復で金利も上昇してきて、Fed(米連邦準備制度)はインフレを許すのではないかという想定で1.7%までいっていた。しかし、ドットチャート(FOMCメンバーの政策金利予想分布)から読み取れるように、自由にインフレを進展させるつもりはないらしいということが分かって、1.3%まで下がった。1.7%と1.3%の間で、しばらくは推移していく感覚。いまのマーケットはそのように考えている」(神山氏)

 もう一方のテーパリングについては、8月に予定されているジャクソンホール会合で何らかの話が出る想定だ。「そのときに、どんなスピードで、どんなことを言うかが注目される。マーケットの予想を壊すような発言はしないだろう」(神山氏)

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