昨今、地球温暖化対策に向けて脱カーボンなどの動きが激しくなっている。とはいえ、自動車産業や工場などとは違い、特にCO2を出すような事業をやっているわけでなければ、「我が社には直接は関係ない」と、心のどこかで思っている経営者もいるかもしれない。
それに対し、「ESGへの積極的、能動的な対応を求める。地球環境への配慮が特に重要だ。今後の生き残りの上で、10年後ビジネスを続けられるかどうかは脱カーボンができているかどうか。炎上リスク、名声確保ではなく、ビジネスど真ん中の経営リスクそのものになってきている」。こう話すのは、三井住友DSアセットマネジメントの責任投資オフィサー藏本祐嗣氏だ。
三井住友DSアセットマネジメントは、成長力のある企業を選別して投資するアクティブ型運用に強みを持つ機関投資家の大手だ。同社の判断基準は、株式の売買を通じて株価に影響を与えるだけでなく、投資先企業については大株主として議決権の行使を行っている。
5月に公表した同社の国内株式議決権行使の方針によると、環境面についてこのような基準を持っているという。
これは地球環境配慮、特に脱カーボンがさまざまな業種で事業環境を一変させる可能性があるからだ。日本を含む各国で導入されている炭素税(日本では地球温暖化対策税)や、日本でも一部で運用されている排出権取引制度などの広がりがそうだ。さらに、輸入品に対して、その製品が作られた際に出たCO2の量に応じて課税する炭素国境調整措置(国境炭素税)と呼ばれる制度も、EUが導入を計画しているほか、米バイデン政権も公約に掲げ、日本でも議論が始まっている。
国境炭素税などの制度が導入されると、産業構造や競争環境に大きな変更が現れる。例えば素材でいえば、鉄鋼、アルミ、プラスチックなどの中で、その製品が作られた際に出たCO2の量(LCA)が値段に反映されていくことになる。自社の製品を作るときに、どのくらいのCO2を排出しているかは、販売価格に大きな影響を与えることになりかねないわけだ。
そのため今後の企業の強さを計るには、財務情報だけでは不十分だと藏本氏は見る。「スポットの業績だけを見ていては、5年、10年後の競争力が見えない時代になってきている。非財務情報の中でも、規制が始まったときに経営者が考慮しなくてはいけない要素については、どのくらい真剣に考えていて、どう対応するのかを見抜いていかなくてはいけない。環境対応について情報開示をし、ロードマップなど道筋を出してもらって、どこが勝ち組になるかを判断したい」
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