世界全体で見た場合、コロナ収束を見据え経済の回復が順調だ。コロナ禍で大きな影響を受けた飲食、旅行、小売の回復はまだこれからだが、GDPに占める比率の大きい製造業はコロナ以前まで回復している。経済の回復を背景に、日経平均株価は3万円前後で推移しており、米ダウ工業株平均株価も過去最高値圏で推移中だ。
では、コロナ禍を乗り切ったかに見える経済にはどんなリスクがあるのか。日興アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト神山直樹氏は、財政、ワクチン、貯蓄率について、3つのリスクがあると言う。
まずコロナ禍に対応して各国が進めてきたのが財政政策だ。コロナ禍における経済を支えているのは財政政策であり、この動向が今後の状況を左右する。主に米国の事情を例に、財政政策をやっている理由として、神山氏は3点を挙げる。
1つはインフレだ。コロナ前まで2〜3%程度だった米国のインフレ率は、コロナ禍で大きく下落。現在は1.7%程度まで戻ってきたものの、以前の状態まではまだ乖離(かいり)がある。連邦公開市場委員会(FOMC)は2020年8月に、期間平均で2%のインフレ率を目指すと表明しており、そこまでは財政政策を止めないと見る。
2つ目は雇用だ。米国の雇用統計を見ると、コロナ禍で2000万人もの減少に見舞われたが、すぐに急反転し、コロナ前の半分まで戻ってきた。「あっという間に半分戻ったのは製造業だ。中国のコロナからの回復が早かったので、バリューチェーンのメカニズムから米国でも回復した」(神山氏)
今後、空運や飲食も含めたサービス業の雇用が回復し、21年末ころに雇用の残りの半分も戻ってくると見る。ただし、「戻るのは年末なので、米連邦準備制度理事会(FRB)は年末までかなり慎重に動かざるを得ない」(神山氏)とし、金融緩和は続けざるを得ないという見通しだ。
3つ目は緊急事態対応だ。金融不安への対策としてFRBは、米企業の社債買い入れなどを開始。クレジットマーケットに介入してきた。ここについては、神山氏は資産買い入れを徐々に減らしていくテーパリングの可能性が高いと見る。「銀行があてになる状況になれば、早い段階で縮小していくだろう」
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