筆者が21年にあらためて、いくつかのセキュリティ企業に取材したところ、やはり話が出てきた。「日本のビジネスも警戒が必要」だと指摘するのは、日本とシンガポールに拠点を置く脅威インテリジェンスを得意とするサイファーマ社のクマル・リテッシュ会長兼CEOだ。
攻撃の兆候があるのは、日本の評判を貶めたい中国、ドーピング問題で排除処分を受けたロシア、さらに4月6日にオリンピック不参加を表明した北朝鮮だ。そうした国々のハッカーたちが、すでにいくつものキャンペーンを立ち上げていると、リテッシュ会長兼CEOは指摘する。しかも、これらの国のハッカー集団は、過去に日本への攻撃を行なってきた実績をもつという。
そんな中で、懸念すべきは、日本オリンピック委員会(JOC)の意識の低さだ。最近も、森喜朗氏が女性差別的な発言で辞任したり、佐々木宏氏が渡辺直美さんに対するコメントで辞任したり、開会式で作曲を担当していた小山田圭吾氏が過去のイジメ問題で辞任したり、JOCの責任が問われるトラブルが続いている。
JOCの問題は、これら数々の失態以外にもある。サイバーセキュリティ分野でも失態を犯していたのだ。
NHKによれば、「JOC=日本オリンピック委員会が去年4月、サイバー攻撃を受け、一時的に業務ができなくなるなど被害に遭っていたことがわかりました。外部のセキュリティー会社の調査の結果、内部情報の流出の痕跡はなかったとして、JOCは被害を公表していませんでした。(中略)この影響でJOCは一時的に業務ができなくなり、事務局で使用していたおよそ100台のパソコンやサーバーのうち、ウイルスに感染した可能性がある7割ほどを入れ替え、およそ3000万円の費用がかかったということです」という(参照リンク)。
世界から注目される東京オリンピックに絡んで、1年前のサイバー攻撃が後になって表に出てくること自体が驚きである。攻撃によって「情報流出はなかった」が、3000万円の費用をかけてPCなどを入れ替えなければならなかった。つまりサイバー攻撃で破壊されたのである。
これはランサムウェア(身代金要求型ウィルス)の攻撃だったが、金銭(身代金)の要求はなかった。であれば、オリンピックの運営側を破壊を狙ったテロだったのではないか。もう無茶苦茶な話だ。
そんな認識の人たちが東京オリンピックのサイバー対策をしているのは、本当に恐ろしい。
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