とにかく、当時から東京オリンピックを狙ったサイバー攻撃は始まっていた。もっとも、これは意外でもなんでもなく、実際に過去のオリンピックでサイバーセキュリティを担当していた人に話を聞くと、攻撃者たちは4年に1回ある世界大会(サッカーW杯など)の場合、その2年前にはサイバー攻撃の準備が始まるという。
日本企業や個人を標的にしたフィッシングメールなどの攻撃が行われていたわけだが、その後もいくつかの持続的な攻撃(キャンペーン)が続けられていた。スポンサー企業が狙われたほか、スポンサー企業の取引先や、日本オリンピック委員会(JOC)と関係のある企業なども標的になっていたという。
筆者はその間に、韓国で暮らす脱北者たちから日本に対するサイバー攻撃の実態を聞いた。オリンピックなどへの攻撃についても、だ。また、欧米のサイバーセキュリティ企業の幹部らも「日本のメーカーが製造・販売する社会インフラの制御装置のソースコード(プログラムの設計データ)が丸々盗まれていることを把握している。盗んだハッカーは、闇の掲示板でそのソースコードを使ってハッキングできたら懸賞金を出すと募集していた。結局、その制御装置のシステムは攻略され、マルウェアが仕込まれた。今、その制御装置はいつでも再侵入やサイバー攻撃が行える状態になっている」と話していた。
つまり、この装置を使っている日本のインフラ施設がいつサイバー攻撃を受けて大混乱を巻き起こすかもしれないという話だった。これが事実なら、間もなく始まるオリンピックで何かが起きるかもしれない。
19年になっても、海外のサイバーセキュリティ関係者らは、東京オリンピックが狙われると繰り返していた。新型コロナ感染症が発生する前だったが、JOCの関係者や、日本のサイバーセキュリティの司令塔と言われるNISC(内閣サイバーセキュリティセンター)の関係者も、東京オリンピックに合わせて、日本のインフラがサイバー攻撃に遭う可能性を警戒していた。例えば、電力や鉄道、航空などへの攻撃は絶対に避けなければいけないので、さまざまな対策を指示していると言っていた。
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