それだけではない。JOCが仕切るはずの、会場に出入りする外国人の管理がザルであるとの指摘もある。7月3日、東京オリンピックのスタッフとして来日していた米国人と英国人の電気技師らがコカインを使用したとして麻薬取締法違反の疑いで警視庁に逮捕されている。
問題は、自由に出歩いてコカインを入手している人たちが、オリンピック関係の電気技師だったことだ。彼らが簡単に会場に出入りできれば、内部システムのセキュリティが心配になる。USBか何かを内部システムに差し込んでマルウェアを感染させれば、電力を落とすことも可能になるからだ。
オリンピック関係者がそうしたことを想定していないとしたら、もはや恐ろしさを通り越して、ホラーですらある。
そしていま、関係者が恐れているのは、開会式や競技の様子などを世界に送るテレビやストリーミングの「中継」である。サイバー攻撃によって中継が遮断されるようなことがあれば、IOCとの契約上、賠償金が発生する。そうなると莫大な金を払う必要が出てくるので、絶対に阻止する必要がある。中継に関係する企業も狙われている可能性があるので、徹底して対策を再確認しなければいけない。
トラブル続きの東京オリンピック――。サイバー攻撃が起きないように、祈るしかないのか。五輪に関与している企業、その取引先などは大会が終わるまで、警戒を続けるべきである。
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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