ビジネスの現場にWeb会議ツールが広く浸透したことで、昨今ではコミュニケーションの質を向上させたいというニーズが高まっている。例えば、ノートPC内蔵カメラを外付けWebカメラに変えるだけで、映像の受け手の印象は大きく変わる。前回は「Web会議を成功させる! “Zoom映え”を狙うWebカメラ最新モデル」と題して、LEDライト(色温度自動調整)を内蔵した「CAM130」を紹介したが、今回は映像だけでなくサウンドでも高い品質を誇るサウンドバータイプの最新モデル「VB130」を紹介していこう。
VB130は、アバー・インフォメーションが中規模会議室(2〜8人規模)向けに提供している高機能Webカメラだ。本体中央に4K画質のプレミアムカメラを搭載し、両端に向けてサウンドバーをレイアウトしたデザインが特徴。拠点間の遠隔ミーティングで“空間を共有”しているようなリアルなコミュニケーションを行いたいというニーズから人気を博した「VB342+」の兄弟機に当たる。価格は税込み8万4700円だ。
VB130とVB342+の違いは大きく3つ。まず1つがLEDライトの内蔵だ。本体の周囲を囲むようにリングライトが配置され、会議に参加する人物の顔を正面から照らせるようになっている。CAM130と同様、環境光を問わず話し手の表情がしっかりと見えるようになり、相手に好印象を与えやすい。例えば、窓のない会議室では頭上にある蛍光灯からの光で顔に影が落ちやすくなるが、VB130から発する横方向からの光もあることで、窓際にいるような雰囲気になる。照度の足りない場所や逆光など、環境を問わず質の高い映像コミュニケーションが行えるのがポイントだ。
ただ、あまり広い(奥行きのある)部屋だとさすがに光が届きづらくなるので、この効果を最大に発揮できるのはやはり一人で使うシーンになるだろう。VB130はVB342+と比べて大幅に軽量化が図られており、本体底部のクリップで外部ディスプレイのベゼルにも固定できるので、自席のディスプレイに設置する、といった使い方もよさそうだ。
2つ目はソフトウェア面での強化。CAM130と同じく、参加者の顔を認識して画角を調整するオートフレーミング機能が「マスクを装着した人の顔」も認識できるようになった。もともとVB130の画角は最大120度と広く、狭い部屋に複数の人が座っているような状況でも広くカバーできるが、このオートフレーミング機能によって参加者(カメラに写っている人)がちょうどフレームに収まるように自動調整してくれる。ただ、これまでのオートフレーミング機能は、参加者4人のうち両端の人がマスクをつけていると、中央の2人だけに画角が調整されてしまっていた。一方、VB130やCAM130ではこの問題が解消され、顔と胴体(シルエット)を認識するように改良された。
なお、参加者全員の顔を認識して画角を調整するオートフレーミング機能とは別に、スマートスピーカーを搭載するサウンドバータイプのVB130やVB342+では、発言者の方向にカメラを向ける「話者追尾機能(音声追尾)」がある。会議室と会議室をつなぐ遠隔ミーティングの場合でも、発言がトリガーとなり話者がアップになって相手側に映るため、よりリアルなコミュニケーションが行えるというわけだ。また、フレーム位置のプリセットは従来同様に10個まで設定できるので、参加者全体を映すときはオートフレーミング、発言者にフォーカスするときは話者追尾、ホワイトボードを映すときはプリセットで、といったようにカメラ位置を変更しなくても付属のリモコンで瞬時に切り替えられる。
そして3つ目の特徴が「オーディオフェンス」と呼ばれる新機能だ。これはスマートスピーカー側に搭載されるビームフォーミング機能で、カメラが映している会議のエリアを限定し、その外にある環境音をノイズリダクションするというもの。現行モデルで利用できるのは今のところVB130のみの目玉機能になっている。
オフィス以外の場所で業務を行うケースが増えている昨今、重要な顧客とのオンライン商談で無関係な音が入るのは好ましくないが、このオーディオフェンス機能があればその心配はなくなる。オフィスの自席やシェアオフィスといったオープンスペース、また生活音が入りやすい在宅ワークでWeb会議を行う際に重宝するはずだ。
まずはサイズの比較から。写真を見れば分かるように、本体幅が約650mmだったVB342+(写真後ろ)に比べてVB130(写真手前)は、約350(幅)×75(奥行き)×65(高さ)mmと、かなりコンパクトなサイズになっている。重量も約2.133kgから約0.922kgと半分以下に軽量化された。このため、VB342+ではディスプレイ背部のVESAマウントや壁掛けでの利用が想定されていたが、VB130は付属の強力なクリップで固定する、より気軽な使い方ができるようになった。ただしその半面、オーディオ機能はVB342+の10W(5W+5W)から6W×1基にややダウングレードしている。
特徴の1つである内蔵ライトは、CAM130と同様に環境光にあわせて色温度を調整するが、2700K〜5700Kの間でマニュアル調整も可能だ。これにより、前回のレビューで紹介したように、周囲の明るさに左右されることなく、見栄えの良い映像を相手に伝えられる。ただし、スマートスピーカー側に内蔵された5つの指向性マイクが4メートルの奥行きまで発言を拾えるのに対し、LEDの光が届く範囲はそれほど広くない。多人数会議で全く意味がないわけではないものの、公式でも1メートル以内での利用が推奨されており、基本的には一人か二人が参加する小規模なWeb会議で効果を発揮すると考えた方がよさそうだ。実際の利用ではやはり液晶ディスプレイのベゼル上部に装着すると、カメラ(目線)とライトの届く範囲がぴったりだった。
オフィスに集まって仕事をする、という従来の働き方に縛られない新しいワークスタイルは、たとえ新型コロナが収束しても続いていくだろう。オフィスの移転や縮小、フリーアドレス制の導入、そしてこれまでのオフィスには当然のように存在していたFAXやコピー機の廃止など、ファシリティも含めてオフィスを“再デザイン”する時期にきている。そこでは当然、Web会議用のスペースや、既存の会議室を遠隔ミーティングに対応させるためのWebカメラやサウンドシステムも必要になるはずだ。こうした「ニューノーマル時代の会議室」を設計する上で、今回紹介したVB130はうってつけの製品になるはずだ。
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