ネットフリックスは「伸び悩んでいる」は本当か? ゲーム参入でも踏襲する“必勝パターン”本田雅一の時事想々(2/3 ページ)

» 2021年08月05日 07時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 しかし本来、映像作品へのニーズは多様だ。ネットフリックスは安定した収益源で、一時的な人気ではなく顧客満足を高めるカタログ作成を行っていた。さらにオリジナル作品にも投資することで、会員の満足度を高め、また新規顧客を獲得するためのカタログ作りについても、さらに踏み込んだのだ。

 ネットフリックスのような会員制サービスにとっての収益向上とは、大人気作となって劇場に多くの人が集まり、あるいはパッケージ販売が爆発的に伸ばすことではない。あくまでも着実に会員数を伸ばしていくことだ。

 会員たちがどのような作品をどのようなキーワードで検索し、繰り返し視聴しているのか──。そうした点に着目し、連続ドラマにしても、過去の映画カタログにしても、視聴傾向を見ながら、大ヒット作ではなく確実に観たいと思ってもらえる作品を自ら製作するようになった。

 オリジナル作品、あるいは独占配信権を獲得したコンテンツであれば、視聴者はその配信業者で観るほかない 。

photo 写真はイメージ(提供:ゲッティイメージズ)

 ネットフリックスがオリジナル作品を配信し始めて以降、同社の事業運営コストの約半分は、コンテンツの減価償却費に充てられ、会員収入が増えれば増えるほど作品への投資を続けた。15〜16年の営業利益率は5%以下の水準だったが、17年ごろから高まり、20年12月期には18.3%に達した。

 オリジナルコンテンツは、あらかじめ組まれた予算で製作できる。また会員数が十分に多ければ超大作映画並みの投資も継続が可能だ。しかも会員数が増えたとしても、ライセンス料金が増えることはない。なぜなら自分たちで製作しているからだ。

 実際にはオリジナル作品の場合でも、再生回数と連動したライセンス料を支払うケースもあるが、完全な外部調達に比べれば変動幅は小さい。オリジナル作品が増えるほどコスト変動幅は小さくなり、経営リスクは下がる。今後、ネットフリックスの経営はさらに安定していくだろう。

ゲーム配信は必勝パターンを踏襲

 同社がゲーム配信へと向かい始めたのは、映像コンテンツの配信で高収益が見込めるようになり、さらに会員基盤を強固にする“次のステージ”に入ったためだ。

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