営業利益率が17年から増加し始めたと述べたが、営業キャッシュフローがプラスに転じたのは今年(21年)になってからのことだ。このタイミングでゲームへの投資を行うのは理にかなっている。
これまでの戦略は、まだネットフリックスに加入していない消費者層に訴求するため、オリジナルの映像作品に投資をすることだった。
例えば、北米で一時的に会員数が伸び悩み始めたときには、より幅広い視聴者層への拡大をコンテンツ投資戦略を通じて進めてきた。黒人コミュニティーの歴史や文化に根ざしたコンテンツや、ヒスパニック系住民の文化を意識したドラマにも投資したりするなど、生活スタイルや文化の違いをカタログ構成に反映し、加入率が低かった消費者層にも訴求した。
さらに北米市場の飽和が見えてくると、海外での現地製作に力を入れるようになった。映像作品は、国ごとに好まれる作品の傾向が異なるためだ。
日本では東宝と提携し、スタジオを運営することを発表済み。韓国でも多額の製作予算を投入するニュースが話題になった。グローバルに広がる現地製作の波は、コロナ禍で一時的に減速していたが、制作進行のペースが戻って来れば、会員数増加の余力はまだあるだろう。
ネットフリックスの会員数が2億人を超えた現在、この必勝パターンはまだ止まりそうにないが、彼らの強みをさらに強化するのがゲーム配信だ。
映像作品とゲームは親和性が高く、映像作品のゲーム化、人気ゲームの映像化。その両方のパターンで成功例がある。しかも同社の場合、ゲーム配信のプラットフォームと映像配信のプラットフォームを共通化させることで、あらためて顧客獲得を行う必要もない。
ライバルはほぼ同等の会員数を持つアマゾンになるだろう。映像配信でも競合する同社は、クラウドゲーミングサービス「Luna」(ルナ)を発表している。しかし現実的なライバルはYouTubeかもしれない。
なぜなら、ネットフリックスが没入感重視のコアなゲームファン向けのコンテンツを配信するとは考えにくいからだ。詳細は明らかではないが、映像作品のファンコミュニティーに根ざしたカジュアルなゲームが中心になっていくだろう。
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