河村市長がやらかしました 謝罪で使ってはいけない仮定法過去完了お詫びしたい(1/3 ページ)

» 2021年08月06日 09時12分 公開
[増沢隆太INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた):

株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役。キャリアとコミュニケーションの専門家として、芸能人や政治家の謝罪会見などをコミュニケーションや危機管理の視点で、テレビ、ラジオ、新聞等において解説している。大学や企業でのキャリア開発やコミュニケーション講座を全国で展開中。著書「謝罪の作法」他多数。


 河村たかし名古屋市長は、表敬訪問で訪れたオリンピック選手の金メダルをかじったと大ひんしゅくを浴びています。貴重な金メダルを勝手にかじるという行為そのものが許されませんし、何より感染症対策に陣頭指揮を執るべき立場の市長が絶対にやってはいけない濃厚接触をするなど言語道断です。

 さらにお詫びコメントとして「迷惑を掛けているのであれば、ごめんなさい」との仮定法過去完了謝罪をしました。絶対タブーな、謝罪になっていない謝罪です。

(1)破綻しているセリフ

 受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の審議において招へいした肺ガン患者参考人への暴言を吐いた自民党・穴見陽一衆院議員は「(関係者に)不快な思いを与えたとすれば、心からの反省と共に深くお詫び申し上げる。」と謝罪しました。私は謝罪会見でコメントを求められる場合、素材がある限りフルタイムで会見映像を見ますが、その都度引っかかるのが「としたら」という言いまわしです。

 「不快な思いを与えたとすれば、深くおわび」という言葉の不快感の原因は、それが英語の仮定法過去完了だからではないでしょうか。英文法忘れちゃったよという人もいるでしょうが、仮定法過去完了は実際起こった過去の事実とは反対のことを仮定するときに使うとされます。「全然謝る気ないだろ」と感じてしまうのは、謝罪より結果起きたトラブルを何とかしたい気持ちが前面に出てしまっているからでしょう。

 特に芸能人より政治家や政府高官のような高位の立場の人が使うことが多いのですが、この言葉が破綻していることは明らかです。「不快な思いを与えたとすれば、心からの反省と共に深くおわび」ということは、「与えてなければ謝る必要はない」という意味でもあり、謝る必要はないけど「心からの反省」という言葉は全く意味をなしません。破綻したロジックが、ウソくさくて全く誠意や反省が感じられない空虚な言葉として響くのです。

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