発売前に現行モデルの5倍! パナの電動工具が売れに売れている理由週末に「へえ」な話(3/4 ページ)

» 2021年08月07日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

かゆーいところを見つける

 次に、もう1つの特徴である「アタッチメントシステム」について説明しよう。インパクトドライバーの使い方として、先端の真ん中に専用のビットを差し込んで、ネジなどをキュルキュルキュルと締めていくわけだが、ここで問題が発生することがある。通常作業であれば大丈夫だが、天井に近いところや壁のきわはどうか。ネジを締めようと思っても、本体が邪魔をしてうまく作業ができないことがあるのだ。

 強引に作業をすると、壁などをキズつけることになるかもしれないので、そうした狭いところは手作業である。「ドライバーを取り出して、あ、ネジも忘れずに」とモタモタしていると、作業効率がどうしても落ちてしまう。ヘッドサイズを短くしたように、職人さんから「パナさん、ちょっとつくってよ」といった声があったのかと思っていたら、同社の企画チームが「電動工具が届かないところに届くようなモノをつくれば、現場の人たちが喜ばれるのではないか」と考え、商品開発に至ったそうだ。

 結果、8方向の角度に取り付けられるアタッチメントシステムを搭載することに。これまで電動工具が使えなかったところでも、ネジを締めることができるようになったのだ。

アタッチメント機能を搭載したところで、狭いところでも作業ができるように

 ヘッドを短くすることで、持ち運びが軽くなっただけでなく、狭いところでも作業することができるようになった。また従来の電動工具では、作業することができなかった隙間などでも使うことができるようになった。冒頭でも紹介したように、2つの「かゆーいところに手が届くようになって」売れに売れているのだ。1つは、かゆーいところをかいてあげて、もう1つは、かゆーいとこを見つけてあげて。

 ただ、それにしても売れ過ぎではないだろうか。発売前にもかかわらず、従来品の5倍も売れているのである。電動工具を買い替えるタイミングは「使っているモノが古くなったから」とか、「壊れてしまったから」といった理由が多いのではないだろうか。と思っていたわけだが、消費者の行動はちょっと違っていたようである。

 「使えなくなったから買う」のではなく、「性能がよくなったから」「効率よく作業ができるから」といった理由で購入する人も多いのだ。例えば、ガジェット好きで、新商品が登場するたびに購入する人がいるが、職人とガジェット好きの消費行動はどこか似ているところがある。電動工具といえばB2Bの商材であるが、気になるモノが出れば、「すぐに購入する」「発売前に予約する」といった人たちが一定数いるようだ。

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