儲けることが難しい「五輪ビジネス」に、なぜ日本企業は“お金”を出すのかスピン経済の歩き方(1/7 ページ)

» 2021年08月10日 09時41分 公開
[窪田順生ITmedia]

 「感動をありがとう!」「コロナ禍でも完璧な大会をした日本の素晴らしさが世界に伝わった!」

 なんて喜びの声に列島が包まれるなかで、なんとも複雑な心境の方たちがいる。五輪のスポンサー企業や、五輪経済効果を期待していた業界のみなさんだ。

 ある五輪スポンサー企業の経営者は『日本経済新聞』(8月9日)に対して、「数十億円払ったが全くもうからなかった」と愚痴をこぼしている。また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎・主席研究員が『毎日新聞』(8月8日)の取材に答えたところによると、五輪の経済効果は「ほぼゼロ」だという。

 ゼロならまだマシだ。「無観客五輪」によって生じた巨額損失の試算が国内外のエコノミストから発表され、中には3兆円超の大赤字だという見立てもあり、これらの損失が全てわれわれの血税で賄(まかな)われることへの不満の声も上がっている。

競技会場に持ち込む飲料にも……

 算出し難いダメージを被った企業もある。例えば、競技会場に持ち込む飲料がコカ・コーラ社以外の場合、ラベルをはがさないといけない“スポンサールール”に反感を抱く人が続出し、中には不買を呼びかける人もいた。もちろん、売上的にはなんの影響もないが、この騒動が“デジタルタトゥー”としてネット上に未来永劫アーカイブされたことで今後、同社に何か問題があるたびに蒸し返される。投じた資金に見合わないマイナスのPR効果といえよう。

 この背景には、感染拡大局面かつ酷暑のタイミングにこだわったのは、全ては巨額マネーを注ぎ込んでいる米テレビ局の意向だという話が広まったことで、「五輪スポンサー=スポーツを食い物にしている連中」といったネガイメージが広まったことが大きい。最上位スポンサーのトヨタ自動車が、五輪関係のテレビコマーシャルの放映を取りやめたことが、その証左である。

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