ソニー、デジカメ好調で上方修正 それでも「カメラ市場が復活した」と言い切れない理由本田雅一の時事想々(2/3 ページ)

» 2021年09月03日 08時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 ご存じの通り、デジタルカメラ市場は日本メーカーが主役となっている数少ない電機製品だが、あくまでも復調であり、回復しているわけではないからだ。

 いやいや、キヤノン、ニコンも立て続けに業績回復しているではないかと、この春から直近までの業績報告、通期営業利益の予測を見て楽観的になっているかもしれないが、“元通りの形”に業界が戻っているわけではない。

 コロナ禍の中での経費削減効果、昨年の売り上げが落ち込んだ中で新製品投入とワクチン接種の進行による人の流れの増加、そもそも売り上げが半分に落ち込んだ昨年の経験を基に事業体制を整えていたことなど、複数の要因が重なっての業績回復と考えるべきだろう。

 CIPA(カメラ映像機器工業会)が毎月発表している統計(現在は21年6月まで)を見ると、今年に入っての回復傾向は顕著だ。欧米でのワクチン接種が進んだことから人の動きが戻り、旅行やイベントに参加する人たちが新しいカメラを買ったことで復調したというのが大きな流れと見ることができる。

 地域的に見ると、中国、欧州、米国を中心に売り上げが伸びており、おおむねコロナ禍の経済活動と連動していることが感じられる。ただし、19〜20年にかけては、前年同月比で半分以下の月もあり、20年5月に至ってはわずか27.4%の出荷数量しかなかったことは留意せねばならない。

 昨年も9月以降にはある程度、回復傾向を見せ、今年もその傾向を引き継いでいることは明らかではあるものの、元の規模には戻っているわけではない。例えば6月の出荷数量でいえば、昨年に比べて32.3%伸びているが、昨年は19年に比べ59.2%も落としていた。

 コロナで需要が蒸発した市場環境を前提としている業績予測の中で、予想以上に回復傾向が強いことを投資家向けに伝えるための「上振れ予測」であり、積極的に投資して市場を拡大した結果生まれた上振れではない。

 従って、カメラメーカーの業績回復が相次いでいるからといって、デジタルカメラ市場の復活と新たなる成長への道が見えてきたと考えるのは早計だろう。しかし悲観的な状況なのかといえば、実はそうでもない。

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