これがDXと呼べるか不明だが、出版業界は新たなフェーズに入ったようだ前年比4.8%増(1/3 ページ)

» 2021年09月01日 08時00分 公開
[猪口真INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:猪口真(いのぐち・まこと)

株式会社パトス代表取締役。


 全国出版協会・出版科学研究所の調査データによれば、2020年度の紙と電子、両方あわせた推定販売額が、1兆6168億円となんと前年比4.8%増となったようだ。

 コロナ禍で書籍が好調だとは言われていた。ステイホーム期間が続き、自宅で読書というライフスタイルを選択する人が増えたからだと言われ、街の書店も、久しぶりに売り上げ○○%アップなどという明るい声が出ていた。

 ただし、全体で見れば、紙の書籍は、そうでもなかった。結果、下げ幅は減少したものの、マイナスだ。

 同調査データによれば、2020年の紙の出版物の販売額は同1.0%減の1兆2237億円(書籍が0.9%減の6661億円、雑誌が1.1%減の5576億円)。2019年(4.3%減)と比べれば下げ幅が縮小したと言えるものの、『鬼滅の刃』に代表されるコミックスが24%増なので、まともな書籍の売り上げたるやさんたんたる結果だ。加えてアマゾンなどの通販の伸びを考えれば、書店ビジネスは相変わらず厳しいと考えざるを得ない。

 上記のデータを見ても、マスコミなどでは、巣ごもり(在宅勤務)となったために、ビジネス書などで進んで学習する機会が増え、書籍の販売が好調だと言われていたが、ほんとにそうかはかなり疑わしい。

 そもそも、ビジネス書は必要にかられて買ったり読んだりすることのほうが多いだろう。少なくとも私の場合は、ビジネス書のたぐいは自分で勉強するだけの場合もなくはないが、ビジネス書ということは仕事で使うということであり、企画書の作成に活用したり、打ち合わせ時の資料に使ったりするものだ。また、一時的に貸したり、借りたりするために、紙の書籍を購入するという側面もある。

 なので、コロナ禍で、自分への投資として書籍を購入するという人は、よほどの意識の持ち主に違いない。

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