これがDXと呼べるか不明だが、出版業界は新たなフェーズに入ったようだ前年比4.8%増(2/3 ページ)

» 2021年09月01日 08時00分 公開
[猪口真INSIGHT NOW!]
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 一方、電子書籍は順調に推移しているようだ。2019年に比べて、28.0%増の3931億円だったという。ただ、2019年も23.9%増だったことを思えば、タイトルの増加や端末の普及を考えると、順当といえば順当だ。全体のなかの電子出版の割合は、2019年の19.9%から24.3%となっており、5人に一人から4人に一人になった感覚か。

 電子書籍は、個人的に読むものだろう。まさに巣ごもりには最適のアイテムだ。貸し借りもしなくていいし、何を読んでいるのか人の目を気にする必要もない。

 その証拠に、電子コミックが31.9%増の3420億円、電子書籍は14.9%増の401億円にとどまっている。

 「honto」の調べによれば、50〜60代による購買が2019年の前年比約117%から2020年は125%と伸びているというから、電子コミックスは、全世代に広まっている。

大手がけん引!

 こうした変化をけん引しているのは、間違いなく大手出版社だ。

 講談社は、2019年12月〜2020年11月の売り上げ約1449億円のうち、紙の雑誌と書籍が約635億円で前年比で1.2%減、電子書籍は約532億円で19.4%増加。すでにイーブンのウエートだ。

 もちろん、内訳はマンガがメインだと思えるが、ビジネスとしてはいい感じだ。

 KADOKAWAは、2021年第4四半期、電子書籍・電子雑誌で、四半期ベースで過去最高の売上高を更新したという。新規事業にも積極的で、映像事業やゲーム事業との相乗効果も出て、順調にビジネスを伸ばしている。

 かつて、「出版社はどうなる?」と心配されたものだが、「紙」を中心としたかつての雰囲気はまったくなく、商材そのもののデジタル化、まさにDXが進んだトップクラスの業界とも言えそうだ。

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