スポーツチームやアーティストと提携したクレジットカードはこれまでもあったが、大規模な発行枚数を前提とするものだった。フィンテックスタートアップのナッジ(東京都千代田区)が新たに発行を始める「Nudge(ナッジ)」は、1枚からでも提携カードが発行できるクレジットカードだ。
社長の沖田貴史氏は、「1枚から発行することで、狭くてもいいので深いファンがいるところにリーチしたい。還元するものは、お得やお金ではなく、体験型のもの」と狙いを話した。
ナッジの沖田貴史社長
Nudgeに特徴は大きく2つある。その1つが、スポーツチームやアスリート、アーティストなどとの提携だ。同社ではこれらをクラブと呼び、当初は比較的小規模な約20の企業と提携する。ユーザーがカードを使用すると、利用額に応じてデジタルコンテンツなどの限定特典が受け取れる仕組み。「支払いを現金からカードに変えれば、懐を痛めることなく、アーティストなどに寄付ができる」(沖田氏)
クラブ側は、初期費用や運営費用不要で提携カードを用意できる。ロゴなどの画像とファンに提供するデジタルコンテンツを用意すればいい。問い合わせや金融リスクはナッジ側が負担する。
カード申し込み時に応援したいクラブを選ぶ。利用額に応じて、デジタルコンテンツなどの特典を得られる
カードの決済手数料をナッジとレベニューシェアする形で、金融に関する知識の必要なく、金融ビジネスに参入できる仕組みだ。
クラブを介してカードを発行してもらうことで、ナッジ側は販促チャネルとして活用する。
Nudgeの提供にあたり、沖田氏が強調するのは「ユーザーを借金漬けにしたり、見えないコストでもうけるというものではない。一緒にファンを大事にする」という点だ。一般的なクレジットカードの収益源は、加盟店から得られる決済手数料(通常3.24%程度)のほか、分割払時の手数料、キャッシングの金利だ。Nudgeでは、決済手数料をメインの収益とし、金利や分かりにくい手数料を得ることを善しとしない。
当初、20の企業と提携する
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