M&Aの失敗に学べ! 今こそ経営人材の育成に舵を切るタイミング日本企業に必要なことは(2/5 ページ)

» 2021年09月13日 05時00分 公開
[桂木麻也ITmedia]

人口4000万人減少のインパクト

 中小・零細企業の後継者難の問題も深刻だが、それ以上に大きな問題がある。それは後継者どころか、日本人の次世代人口そのものが減少する問題だ。15年から日本の人口は減少に転じた。そしてこの減少のスピードはすさまじく、グラフ2が示すように、今後40年で約4000万人が減少すると予測されているのだ。

 4000万の人口減とは、東京・神奈川・千葉・埼玉が丸々なくなることを意味する。西日本に当てはめれば、近畿・北陸・中国・四国が消滅するという強烈なインパクトである。小売・食品・物流・不動産・金融など、人口の多寡が売り上げに直結している産業にとっては死活問題であり、新しい市場を確保することは必須となる。資源の乏しい日本では、大企業を中心に積極的な海外展開を志向してきた経緯がある。しかし、4000万人が消滅する未来予測図の下では、中堅・中小企業であっても海外市場に対してアクセスを持つことは、生き残るためにはどうしても必要になってくる。

 中小企業が海外でM&Aをするのは、資金面で難しいかもしれないが、海外企業と合弁会社を設立したり、業務提携をしたりするなどの施策は間違いなく必要なのだ。それができない場合、後継者難に市場の縮小が加わることで、残念ながら淘汰されてしまうだろう。

海外M&Aの7割は問題含み

 さて、レコフが公開しているもう一つのグラフをご紹介しよう。グラフ1がM&A件数の推移なのに対し、グラフ3はM&A金額を年毎に集計したものだ。同じ時間軸であるが、グラフ1と比べて形状と色合いが随分異なっている。

 これを見ると、日本企業による外国企業へのM&Aの金額が非常に大きくなっていることが見て取れる。海外M&Aの件数は、その年に発生するM&Aの25〜35%程度であるが、大企業による海外企業のM&Aは大規模なものが多く、金額ベースで集計するとこのようなグラフになるのである。ちなみに、日系企業によるM&Aで過去最大のものは、18年に武田薬品工業が手掛けた英・製薬会社シャイアーの買収で、買収金額は6兆2000億円だ。まさに社運を賭けたM&Aといってよいだろう。

 一般的に1000億円を超えるM&Aは超大型案件と呼ばれるが、グラフ3を見ると、06年から海外M&Aの金額が大型化している。バブルの後始末を終えた大企業が、国内市場の縮小に対してアクションを取り始めたということだろう。

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