「女性だからではなく実力で選べ!」が、日本企業の競争力を低下させているワケスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2021年09月21日 09時23分 公開
[窪田順生ITmedia]

経営者を変えるべき

 では、この雰囲気を変えるにはどうすべきか。総務だ、人事だ、管理職の意識を上げるだとかいろいろなことが叫ばれているが、筆者は最も有効なのは、経営者を変えるべきだと考えている。「ムラ」の中でしか生きてこなかった視野の狭いおじさん役員を減らしていくのだ。

 西村康稔経済再生相が、日本経済や企業組織に危機感を持つ若手議員や民間経営者を集めた「企業組織の変革に関する研究会」というものがある。ここが先日公表した報告書に興味深い提言がある。

 『日本の経営者は圧倒的に生え抜きの男性が多く、多様性は乏しい。一度でも転職すると経営者になれない。また、多様性がないことで最適な意思決定ができなくなっている』

日本のCEOは、生え抜き比率が突出(出典:企業組織の変革に関する研究会)

 報告書内のデータによれば、新任CEOの外部昇格の割合が米国、カナダ、西欧、ブラジル、ロシア、インドで軒並み20%を超えて、中国でも14%となっているに対して、日本ではわずか3%のみ。また、新任CEOの「他企業での職務経験なし」の割合が、米国・カナダが6%、西欧14%、中国34%となっている中で日本だけが82%と異常なほど高い。

 では、日本の経営者は無能なのかというと、おそらく多くの日本人はそんなことはないと即答するだろう。新卒から同じ一つの企業で働き続け、その厳しいサラリーマン社会の中でライバルを蹴落として社長まで上りつめるのは並大抵ではない。

 このように閉鎖的なピラミッド社会のパワーゲームを勝ち抜いていた人が「実力者」と呼ばれる。政治の世界が分かりやすい。安倍政権時、失言やら暴言を繰り返したり、ロクな答弁ができない大臣たちが問題になったが、なぜ彼らが選出されたのかというと、当選回数が多くて各派閥の幹部だからだ。日本人にとって「実力者」とは仕事ができる人ではなく、「ムラ社会で長く生き伸びてきた人」なのだ。

 さて、そこで日本人が大好きな「女ではなく性別で選べ!」というキャリア観をあらためて考えていただきたい。「ムラ社会で長く生き伸びてきた人」が一目置かれるようなこの世界で、どれだけ女性が処世術に集中できるだろうか。結婚や出産というハンデがある中で、「半沢直樹」のように「倍返しだ」とか「土下座しろ!」なんてライバルとパワーゲームに興じることができるだろうか。

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